【遺産相続④】借金も遺産分割の対象となるの?

父が半年ほど前に亡くなりました。父は、生前、レストランを経営しており、事業資金として銀行から8000万円を借り入れていました。相続人は、母と私と弟の3人です。話し合いの結果、弟がレストランの経営を引き継ぐことになったため、父の遺産を相続するかわりに、1人で借金を返済することになりました。
ところが、弟は、借金の返済をまったくしなかったため、最近になって、私のところに銀行から2000万円の支払いを求める通知がきました。このような場合、私は、銀行に支払をしなければいけないのでしょうか。

被相続人が死亡して相続が開始した場合、遺産分割協議が成立していなくても、各相続人は被相続人の債務について法定相続分に従って分割された額を当然に負担することとされています。
そのため、仮に相続人の間で、1人の相続人だけが債務を全部引き受けるというように、債務負担について法定相続分とは違う割合で各相続人が負担する内容の遺産分割協議が成立したとしても、相続人の間でのみ有効となるだけで、債権者には主張できません
したがって、今回のケースでは、相続人は、あなたのほかにお母様、弟さんがいますから、あなたの法定相続分は4分の1となり、遺産分割協議で債務は弟が全部負担すると決めたとしても、法定相続分に従って、お父さんの債務を分割した2000万円については銀行に対する支払義務を負いますので、銀行の請求を拒めません
今回のような場合に、あなたが銀行に対する支払義務を免れようと思うのでしたら、相続人間で遺産分割協議をする際に、あなたとお母様が債務負担を免れ、弟さんが全部負担する点について、債権者である銀行の承諾を得ておけばよいのです(これを「免責的債務引受契約」といいます。)。