【個人再生⑥】給与所得者等再生手続と小規模個人再生手続の選択

給与所得者等再生手続と小規模個人再生手続の選択基準はありますか。

1 給与所得者等再生手続と小規模個人再生手続の概要については、【個人再生①】をご参照ください。 
給与所得者等再生手続と小規模個人再生手続は、その利用対象が全く異なるわけではなく、給与所得者等再生の申立人となることができる者は、常に、小規模個人再生の申立てもできます。
これに対して、そもそも給与所得者等再生手続開始の要件を満たしていない場合には、小規模個人再生手続を選択するほかありません。
2 現実の運用においては、再生計画案に同意しない旨の書面回答を行う債権者が少数であることから、あえて小規模個人再生を選択したとしても、再生計画案が否決される可能性は低いといえます。
また、給与所得者等再生の場合、再生計画を遂行したことがその後の破産・免責手続における免責不許可事由となる可能性があり(破252条1項10号ロ)、注意が必要です。
具体的には、当該再生計画認可決定が確定した日から免責申立てまで7年を経過していないことが破産・免責手続における免責不許可事由とされています(もっとも、再生計画の履行期間(原則3年、最長5年)を考慮すると、上記のとおり、同号ロの免責不許可事由に係る7年の期間が再生計画認可決定確定日から起算されるため、再生計画遂行後4年ないし2年を経過していれば、同号ロの適用がないこととなります。)。
これに対して、小規模個人再生の場合、再生計画を遂行したことは破産手続における免責不許可事由ではありません。
3 さらに、給与所得者等再生における最低弁済額を画する基準となる「可処分所得」は高額になりがちです。
4 以上の理由から、両手続の選択は、小規模個人再生手続の選択をまず検討し、問題が残る事案に場合には、給与所得者等再生手続を検討する、という考え方でよろしいかと思います。