【遺産相続㉒】寄与分の請求をしたいのですが・・・

知人から「寄与分の主張をしたらいいよ」と言われました。そもそも「寄与分」についてあまりよく理解できていないので、教えて下さい。

被相続人の生前、被相続人の財産維持あるいは増加に貢献した人に、貢献に相当する額を多く相続させる制度があり、これが寄与分です(民法904条の2第1項)。
寄与分が認められるためには、当事者全員の合意が得られるか、おおむね次のような要件を満たすことが必要です(東京家庭裁判所家事第5部「寄与分の主張を検討する皆様へ」参照)。
1 特別の寄与であること
民法では、夫婦間の協力扶助義務(752条)、親族間の扶助義務(877条1項)及び相互扶助義務(730条)が定められています。相続に際しては、これらの義務があることを前提として法定相続分が決められています。
したがって、労務の提供や療養看護等のすべてについて寄与分が認められるわけではなく、寄与分が認められるには、夫婦・親族間の扶助として多くの人が通常行うと期待される程度を超える特別の労務の提供や療養看護等(寄与)を行ったことが必要です
単に、他の相続人と比較して、かかわりの程度が大きかったということだけでは、特別の寄与があったとはいえません。
例えば、被相続人と同居していた、頻繁に被相続人宅を訪ねていた、月々小遣いをあげたり物を買ってあげていた、旅行に連れて行った、入院中他の相続人よりも頻繁に見舞いに行ったなどの孝行では、特別の寄与があったとはいえません。
2 相続開始前までの行為であること
被相続人が亡くなった後の行為、例えば、遺産不動産の維持管理、遺産整理、法要の実施などは、寄与分の対象になりません。
3 対価を受けていないこと(無償性)
無償又はこれに近い状態で寄与がなされていることが必要です。現金で給料や報酬をもらっていた場合だけではなく、被相続人に生活費を負担してもらっていたり、被相続人の家屋や土地を無償使用している場合は、寄与分に該当しないことがあります。
4 被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること
特別の寄与によって、被相続人の財団が減少することをくい止めたり、増加をさせたりというような財産上の効果が具体的に現れたことが必要です。
精神的な支えになったなど、財産上の効果と直接結びつかないようなことは、因果関係があるとはいえません。
5 客観的な資料等で証明できること
寄与分の主張をする被相続人は、誰が見ても、もっともだと分かるような裏付け資料を提出し、特別の寄与があることを自ら立証しなければいけません。