【遺産相続㊳】不動産の評価方法は?

相続財産の中に不動産があるのですが、どのように不動産の価値を算定すればよいですか。また、不動産の評価について注意点等があれば教えて下さい。

1 不動産の評価方法については、固定資産税評価額相続税評価額(いわゆる路線価格)地価公示額等のほか、不動産業者による業者査定価格等があります。
どのような評価方法を採用するかについては、当事者が協議により決定します。
多数の不動産業者から査定書を出してもらい、一番高いものと低いものをカットし、残りの中間値をとるなどの方法も考えられます。
2 当事者間で合意が成立しない場合には、不動産鑑定士を鑑定人に選任し、評価を行うことになります。
調停中に鑑定を実施する場合は、法定相続分に基づいて各当事者が鑑定費用を負担するのが原則です。
相手方が不出頭の場合には、申立人が鑑定費用を立て替えることになります。
そして、調停成立時には、相続人それぞれが負担する金額を定めて申立人に支払う旨の条項を盛り込みます。
また、遺産分割の審判がなされた際には、費用負担の定めをしないと、原則として申立人の負担となるため、裁判所は、審判の主文において相手方に対し受益の限度で手続費用の負担を命ずることになります。
3 借地権負担付きの土地(底地)の価格は、更地価格から借地権割合を控除して評価します。
4 借地権価格は、更地価格に借地権割合を乗じて評価するのが通例です。
借地権割合の多くは、更地価格の6割から8割程度といわれていますが、詳細については、路線価図の右隣の表示を参考にしてください。
5 借家、貸家、貸家建付地(貸家やアパートの敷地になっている自用地)についての簡易な評価方法としては、財産評価基本通達において定められた貸家及び貸家建付地の評価方法が参考にする方法があります。
これによると、
①借家権=家屋の評価額×借家権割合(0.3)
②貸家=家屋の評価額×(1-借家権割合)
③貸家建付地=更地価格-〔(更地価格×借地権割合)×借地権割合〕
6 共有物件を評価する場合には、共有持分に係わる市場性が考慮されます。
すなわち、建物は一般に現物分割が困難で、その共有持分は市場性に劣り、減価要因として市場性修正を行っています。
各共有持分を単独で第三者に売却する場合、及び協議が調わず裁判所関与による競売に付された場合には、取引市場において通常共有減価(2割程度)が予想されます。
他方、不動産の共有持分(2分の1)を有する相続人が被相続人の共有持分(2分の1)を代償取得する場合、いわゆる併合利益が考慮され、被相続人の持分に照応する持分価格が基本となります。
7 評価の時点について、実務では、遺産分割時(現実に分割する時点)説に立っています(札幌高裁昭和39年11月29日決定)。
なお、特別受益、寄与分が問題となる事案においては、相続開始時が基準となるので、分割時のほかに相続開始時の評価も必要となります。