【成年後見㉑】成年被後見人の死亡後に病院から治療費等を請求されたのですが・・・

私は、Aさんの成年後見人をしていた者です。Aさんは、生前、病院に入院していたのですが、その後、亡くなりました。Aさんが亡くなった段階で、病院へ支払うべき治療費が10万円未払いとなっていました。先日、病院から私に対し、治療費の未払分を支払ってほしいと連絡がありました。この場合、成年後見人であった私が、手元で監理している財産から未払分を支払ってもいいものでしょうか?

成年後見人の代理権は、本人(成年被後見人)が死亡すると、消滅します。
法律上、本人死亡後に成年後見人に課せられている義務は、管理計算義務と応急処分義務だけです
そのため、もし、治療費の支払いが応急処分義務に該当するのであれば、成年後見人は自らの義務としてこれを支払うべきことになります。
しかし、応急処分義務とは、それをしなければ本人(この場合は相続人を指します。)に不測の損害を及ぼすような場合です。
生前の治療費を直ちに支払わなくても相続人に不測の損害を与えることはありません。相続人が、後日、自分で治療費を支払ったとしても特に問題はありません。
したがって、生前の治療費の支払いは応急処分義務には該当しないと考えられます。
以上の理由から、成年後見人は、本人が死亡後に、治療費の支払を求められても、当然にはそれを支払う義務はないということになります。