【労働審判③】どのような事件の場合に労働審判を申し立てればいいの?

どのような種類の事件の場合に労働審判を選択すればよいのでしょうか?

まず、個別労働紛争解決のための手段には、種々のものがあり、適切なメニュー選択が重要です。
すなわち、個別労働関係紛争を解決する方法としては、労働審判手続のほかにも、民事通常訴訟、少額訴訟、民事調停、民事保全など裁判所における紛争解決手続、労働局長による紛争解決援助や紛争調整委員会によるあっせんなど行政機関による紛争解決手続があります。
これらの手続にはそれぞれ一長一短があり、どの手続を選択するかが、当該紛争を迅速かつ適性に解決するため極めて重要となりますので、労働審判手続手続による解決が相応しい事件か否かを吟味すべきです。
労働審判は、個別労使紛争の大半を対象とするものですが、3回以内の期日で終了するという制約があるため、少なくとも裁判所は「3回で話がつく可能性のない事件は持ってきてくれるな」(判例タイムズ1194号)と考えています。
労働審判手続における事件類型は、多岐にわたっていますが、労働者が解雇雇止めの無効を主張して、地位確認や未払賃金の支払を求める事案が半数程度を占めています。
そのほかに、賃金、退職金、解雇予告手当、残業代等のみを求めるものや、セクハラ・パワハラによる損害賠償を求めるものもあります。
事案の中には、就業規則の不利益変更が問題となったり、整理解雇事案や労働災害と認められるか否かを争点とするような複雑な事案も増加しています。
また、近時の傾向として、労働者が、単純に解雇等の無効を主張して地位確認と未払賃金の支払を求めるだけでなく、これらに加えて、残業代の請求をしたり、解雇に至る経緯の中での上司からの違法な退職強要があったとして慰謝料の支払いを求めたり、さらには上司のパワハラによって精神疾患(うつ病等)に罹患したとして損害賠償を求めるような、複数の請求を合わせて申し立てる事案が増加しています。(以上につき「労働関係訴訟の実務」(商事法務)506頁、513頁参照)