【労働者派遣⑤】労働者と派遣先会社との間に黙示の労働契約が成立する場合とは?

労働者と派遣先会社との間に黙示の労働契約が成立する場合とはどのような場合ですか。

1 【派遣労働④】で回答したとおり、原則として、派遣労働者と派遣先会社との間に黙示の労働契約が成立すると考えるのは難しいと思われます。
では、いかなる場合においても、例外なく派遣労働者と派遣先会社との間に黙示の労働契約は成立しないのでしょうか。
この点、日本精工事件(東京地裁平成24年8月31日判決)は、以下のとおり判示しています。
労働者と派遣先会社との間に黙示の「労働契約」(労働契約法6条)が成立するためには、①採用時の状況、②指揮命令及び労務提供の態様、③人事労務管理の態様、④対価としての賃金支払及び労務提供の態様等に照らして、両者間に労働契約関係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その実質的関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合致があることを必要とすると解するのが相当であって、労働者派遣においては、労働者に対する労務の具体的指揮命令は、派遣先会社が行うことが予定されているから、黙示の労働契約が認められるためには、派遣元会社が名目的存在にすぎず、労働者の労務提供の態様や人事労務管理の態様、賃金額の決定等が派遣先会社によって事実上支配されているような特段の事情が必要とされる。
つまり、労働者の労務提供の態様、人事労務の態様、賃金額の決定等、本来、派遣元会社が行うことについて派遣先会社が実質的に行っていると認められる場合であれば、黙示の労働契約が成立し得るということになります。