労働時間16 (コミネコミュニケーションズ事件)

おはようございます。

さて、今日は、事業場外みなし労働時間制に関する裁判例について見てみましょう。

コミネコミュニケーションズ事件(東京地裁平成17年9月30日)

【事案の概要】

Y社は、広告代理業、印刷業等を目的とする会社である。

Xは、Y社の営業社員として、その業務に従事していたが、入社から約4年後、Y社を退職した。

Xは、Y社に対し、時間外割増賃金を請求した。

Y社は、労働時間を算定し難いときに該当するとして、Xは、所定労働時間労働したものとみなされるべきであると主張し争った。

【裁判所の判断】

事業場外みなし労働時間制の適用を受ける場合にはあたらない。

【判例のポイント】

1 Y社は、労働時間を算定し難いときに該当するとして、労働者が所定労働時間労働したものとみなすべきであると主張するが、Y社は、本件就業規則において営業社員と他の社員とを区別することなく始業時刻、終業時刻を定めた上、IDカード及び就業状況月報等により、個々の社員の労働時間を管理していたのであるし、さらに、Xら営業社員に携帯電話が貸与され、Y社においてその利用状況を把握していたこと、Xら営業社員は、営業日報を作成して訪問先や訪問時間等を報告していたことを考えると、本件が、労基法38条の2第1項に規定する労働時間を算定し難いときに該当するとは認められない

2 被告は、時間外割増賃金に代わるものとして営業報奨金を支給したと主張する。しかしながら、営業報奨金は、営業に費やした時間は営業成果に比例するとの考えに基づくもので、その算定方法も、実際の労働時間とは関係なく、売上高、社内生産高、粗利額及び回収額から算定され、売掛金の回収が不能となった場合等は、営業報奨金の不支給に止まらず、ペナルティーとして基本給から一定額が控除されることもあるというのであって、およそ営業報奨金を時間外割増賃金に代わるものということはできない。

3 Y社は、所定の時間外割増賃金の支払をしなかったのであって、これらの事情にかんがみると、Y社に付加金の支払を命じることが相当というべきであるが、他方、Y社において、平成17年5月31日付けで、事業場外労働に関する協定の届出を行うなどしていること、Y社が、民事再生手続開始の申立てを行い、現在、再生計画に基づき、その履行をしている途上であることに加え、平成10年賃金規則手当のみならず、世帯の状況により支給額が異なる住宅手当についても、これを控除することなく、時間外割増賃金の算定の基礎としていることを考慮すると、本件における付加金の額は300万円とするのが相当である。

判決理由を読むと、そもそもY社では、以前は事業場外労働に関する労使協定が締結されていなかったようですね。

平成17年5月31日付けで労使協定の届出を行っており、遡及的に効力が生じるという主張なのでしょうか・・・?

会社側代理人としてはつらいところです。

このケースでは、時間外割増賃金として、495万余円、付加金として約60%にあたる300万円の支払いを認めました。

Y社が民事再生中であったこと、(たまたま?)賃金規則で通常よりも時間外割増賃金の算定基礎となる金額が多かったことを理由に付加金の減額が認められました。

とはいえ、Y社としては、Xに対し約800万円を支払わなければなりません。

やはり、きちんと事前に対策を講じる必要性を強く感じますね。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。