Daily Archives: 2011年10月12日

労働者性4(エスエーほか1社事件)

おはようございます。

さて、今日は、従業員兼取締役の労働者性に関する裁判例を見てみましょう。

エスエーほか1社事件(東京地裁平成23年3月14日・労判1030号98頁)

【事案の概要】

Xらは、Y社の従業員兼取締役であるところ、Y社から解雇された。

Xは、Y社による解雇は無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xらは、当初の段階で従業員としてY社に入社したものであり、取締役就任時に退職金は支給されず、給与から雇用保険料が控除されていたものであるが、Y社には退職金規程が存せず、労働者が権利としての退職金の支給を受けるという状態にはなかったものであるし、雇用保険料の控除の点も、Xが取締役就任時に、当時、人事、総務関係を担当していて、担当者に指示してそのような取扱いにしたのであるから、いずれも、Xらの地位に関する両当事者の契約意思を決する要因であるとはいえない。むしろ、Y社の確定申告上、Xらの給与は、役員報酬として計上されていたし、証拠によれば、雇用保険に関しては、従業員兼務役員として非該当と判断しており、これらの事情は、いずれも決定的な要因とは言い難い

2 X1が社長に、X2が副社長に就任した際の経緯は、代表権こそAが有していたものの、Aは、権限委譲という言葉とともに、Y社の経営をXらに委ねることを公言していた。例えば、中国でのサウナ事業については、もとより最終的な決裁権者としてのAの承諾を得ているものであるが、X2が発案し、A1が社長としてその運営を助け、銀行から多額の融資を得て、X2が中国の現地法人の代表者となって、4割程度はY社に出社しないで頻繁に中国に赴いてサウナ事業の具体的業務の切り盛りを行っていたのであり、Xらの職務内容は、従業員が行うものと評価することは困難である

3 Xらの給与は、従業員の時点から比較するといずれも約40%以上昇給し、オーナーであり代表者であるAからY社の業務を任せると公言され、X1は、部屋や秘書等の待遇を得ていたことを考慮すれば、少なくとも本件解任通知を受けた時点で、取締役であるXらについて、従業員を兼務していたと評価することは困難であるといわなければならない

裁判所は、形式よりも実質を重視して判断しました。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。