継続雇用制度19(全国青色申告会総連合事件)

あけましておめでとうございます。

今年も一年、よろしくお願いいたします。

さて、今日は、定年後の再雇用における雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

全国青色申告会総連合事件(東京地裁平成24年7月27日・労経速2155号3頁)

【事案の概要】

Xは、平成3年5月からY社に正社員として勤務していた。

Xは、定年退職後、Y社との間で、平成21年10月、期間雇用の定めがある再雇用契約を締結した。

Y社は、Xに対し、期間満了後新たに契約を締結しない旨(本件雇止め)を通告した。

Xは、本件雇止めは無効であると主張し争った。

【裁判所の判断】

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 Y社においては、職員が引き続き勤務することを希望すれば、就業規程の定める一定の要件の下、1年間の再雇用をするという内容の再雇用制度が採用されたのは、平成18年4月1日付けの就業規程の改訂によってであり、Xは、Y社において、前記改訂後初めて定年退職を迎える正職員であったこと、本件雇止めは、更新を経ずして行われたものであることが認められるから、本件においては、前記再雇用制度の運用状況や過去の更新の手続・回数等の雇用継続の合理的な期待を裏付けるに足りる客観的な事情は、特に見当たらないと言わざるを得ない。

2 平成3年当時、60歳定年制は未だ法律上義務づけられていなかったこと、Y社において、職員が引き続き勤務することを希望し、一定の要件を満たしていれば、1年間の再雇用をするという内容の再雇用制度は存在しなかったことが認められるのであって、Y社における定年が60歳であることが求人カードによって明示されていることを考え合わせれば、求人カードに再雇用制度有りという旨の記載があるとしても、また、Xの主張するとおり、
C及びDが、再雇用制度があり、65歳まで働くことができる旨を説明したとしても、それは、未だ存在してなかった前記の内容の再雇用制度を前提とするものではなく、定年が60歳であることを前提に、65歳まで再雇用されることもあり得るという意味にとどまるものと評価され、Xの65歳までの雇用継続を保障するものとは認められない
から、平成22年10月20日の本件再雇用契約の期間満了に当たってのXの雇用継続の合理的な期待を裏付けるには足りない。

3 Y社の再雇用制度は、平成18年4月1日付けの就業規程の改訂により導入されたもので、Xは、Y社において、前記改訂後初めて定年を迎える正職員であったから、Y社において、前記制度の運用について、慣例は存在しなかったというほかない
Xは、Y社及び東京青色申告会連合会の職員の定年後再雇用や役員が60歳を超えても勤務している例を挙げるが、いずれもY社における65歳までの継続雇用の慣例の存在を裏付けるに足りない。なお、Xは、Y社の平成2年4月の東京青色申告会連合会事務局からの分離・独立後に本件雇用契約を締結しており、前記のとおり、Y社の再雇用制度の制度化は、それ以降であるから、東京青色申告会連合会の例をもって、Y社における60歳以上の職員の雇用についての慣例を根拠付けることはできない
以上によれば、Xの本件再雇用契約後の職務内容が、それ以前と同じであったことを考慮に入れてもなお、Xにおいて、本件再雇用契約終了後の継続雇用について合理的な期待があったとはいえない。

久しぶりに継続雇用に関する裁判例を見ます。

この裁判例で学ぶべきは、「慣例」についてのハードルの高さです。

私も裁判で経験がありますが、労使慣行を認定し、そこから一定の法的効果を導くのは、想像しているよりもはるかに大変です。

「長い間、継続している」という一事をもって、労使慣行があるとはならないのです。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。