派遣労働12(日本精工(外国人派遣労働者)事件)

おはようございます 

さて、今日は派遣労働者12名による派遣先会社への地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本精工(外国人派遣労働者)事件(東京地裁平成24年8月31日・労判1059号5頁)

【事案の概要】

本件は、派遣元会社から派遣先会社であるY社に対し、派遣元会社に雇用され、平成18年11月10日以前は業務処理請負の従業員として、翌11日以降は労働者派遣の派遣労働者として、Y社の工場等において就業していたXら12名が、Y社と派遣元会社との間の労働者派遣契約の終了に伴ってY社の工場における就業を拒否されたことについて、主位的に、(1)請負契約当時のXら、派遣先であるY社、派遣元であるA社の三社間の契約関係は、違法な労働者供給であり、XらとY社との間で直接の労働契約関係が成立しており、その後も、当該関係は変化なく維持され、XらとY社との間には直接の労働契約関係が継続していたというべきであること、(2)そうでないとしても、XらとY社との間は、黙示の労働契約が成立していたというべきであること、(3)(1)および(2)の労働契約の成立が否定されるとしても、労働者派遣法40条の4の雇用契約申込義務により、XらとY社との間には労働契約が成立していたと主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および未払賃金と遅延損害金の支払を求めるとともに、予備的に、(4)Y社が長年にわたりXらの労務提供を受けてきた中で、Xらに対する条理上の信義則違反等の不法行為が成立すると主張して、Y社に対し、それぞれ200万円の慰謝料および遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

労働契約の成立は否定

慰謝料として50万~90万円の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Xらが念頭に置く、請負人が注文者から業務処理を受託し、自己の雇用する労働者を、注文者の事業場に派遣して就労させているが、当該労働者の就労についての指揮命令を行わず、これを注文者にゆだねているような典型的な偽装請負のケースの場合、請負人と注文者との契約関係が請負契約と評価することができないとしても、注文者と労働者との間で労働契約が締結されていないのであれば、注文者、請負人、労働者の三者間の関係は、派遣法2条1号にいう労働者派遣に該当すると解すべきであり、このような労働者派遣も、それが労働者派遣である以上は、職業安定法4条6号にいう労働者供給に該当する余地はないものというべきである(最高裁平成21年12月18日)。

2 これを本件についてみるに、・・・派遣法に違反したものであったといわざるを得ない。しかしながら、派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質等に照らせば、特段の事情のない限り、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の労働契約が無効になることはないと解すべきであり、本件において、XらとA社との間の労働契約を無効と解すべき特段の事情はうかがわれないから、請負時代においても、両者間の労働契約は有効に存在していたものと解すべきである
したがって、上記三者間の関係は、派遣法2条1号にいう労働者派遣に該当し、職業安定法4条6項にいう労働者供給には該当しないから、労働者供給に該当することを前提とするXらの主張は、前提において失当というべきである。そうすると、XらとY社との間の直接の(明示の)労働契約の成立を認めることはできない。

3 労働者と派遣先会社との間に黙示の「労働契約」(労働契約法6条)が成立するためには、(1)採用時の状況、(2)指揮命令及び労務提供の態様、(3)人事労務管理の態様、(4)対価としての賃金支払の態様等に照らして、両者間に労働契約関係と評価するに足りる実質的な関係が存在し、その実質関係から両者間に客観的に推認される黙示の意思表示の合致があることを必要とすると解するのが相当である
そして、労働者派遣においては、労働者に対する労務の具体的指揮命令は、派遣先会社が行うことが予定されているから、黙示の労働契約が認められるためには、派遣元会社が名目的存在に過ぎず、労働者の労務提供の態様や人事労務管理の態様、賃金額の決定等が派遣先会社によって事実上支配されているような特段の事情が必要というべきである

相変わらずこの分野は勝訴のハードルがとても高いですね。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。