Daily Archives: 2013年11月25日

賃金69(帝産キャブ奈良事件)

おはようございます。今週も一週間がんばります!!

さて、今日は、タクシー乗務員らによる最賃との差額金・未払賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

帝産キャブ奈良事件(奈良地裁平成25年3月26日・労判1076号54頁)

【事案の概要】

本件は、Xら30名が、タクシー事業を営むY社に雇用されてタクシー乗務員として勤務していたが、平成20年6月21日から平成23年8月20日までの勤務に対してY社から支払われた賃金が最低賃金を下回っており、さらに、Xらの一部については割増賃金の一部に未払がある等と主張して、Y社に対し、雇用契約に基づく賃金請求をした事案である。

【裁判所の判断】

1 合計約250万円の未払割増賃金の支払を命じた

2 付加金として、割増賃金と同額の支払を命じた

【判例のポイント】

1 Y社及び組合は、平成22年12月13日、本件覚書を締結し、同月14日、Y社は、タクシー乗務員らに対し、精算金を支払った。本件覚書には、前記の期間に係るタクシー乗務員らの最低賃金の不足額について精算することとする旨の定めがあったが、同期間に係る債権債務関係が他に存在しないことを確認するような文言はない。
本件覚書及び第一次精算に至る経緯に照らすと、本件覚書を締結する際、組合は、平成20年6月21日から平成22年6月20日までの期間の勤務に係る未払賃金に関し、Y社が提示した額を受領するものの、残額があれば更に請求する意思があったことが認められる。そうすると、本件覚書の締結及び第一次精算の事実をもって、Xら乗務員が、Y社との間で、前記期間の勤務の賃金未払に掛かる争いをやめることを約したものと認めることはできない。
以上によれば、平成20年6月21日から平成22年6月20日までの期間の勤務に係る賃金の未払についてはY社とXら乗務員との間で和解が成立している旨のY社の主張は理由がない。

2 Y社は、X勤務乗務員らに対し、時間外労働に対する割増賃金及び深夜労働に対する割増賃金の支払を怠った違反がある。そして、本件において、Y社は、本訴提起前及び本訴提起後に一部未払賃金の存在を認め、口頭弁論終結時までにXらに対して一定の支払を行ってきたものの、本訴提起後においても、根拠を示さないまま不就労時間がある旨の主張を繰り返すなどしてきた。
かかる事情に照らすと、・・・割増賃金の合計額と同額の付加金の支払いを命じることが相当である。

この事件は、一審で確定しているようです。

ということは、付加金も全額支払うことになってしまいますね・・・。

控訴しておいて、その間に未払賃金を支払えば、付加金の支払いを免れることができるのですが、それはしなかったようです。律儀です。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。