Daily Archives: 2013年11月27日

賃金70(北港観光バス(賃金減額)事件)

おはようございます。

さて、今日は、組合活動を理由とする配車減による賃金・割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

北港観光バス(賃金減額)事件(大阪地裁平成25年4月19日・労判1076号37頁)

【事案の概要】

Xは、路線バス、観光バス、送迎バスなどの旅客自動車運送事業等を業とする株式会社であるY社においてバス運転手として勤務している者であり、Xの賃金は時給制である。

本件は、XがY社に対し、XとY社との間には少なくとも賃金月額が30万円を下らない金額となるよう仕事を与える合意があったにもかかわらず、XがY社の意に反した組合活動を行ったことから、何ら合理性なく、Xに対する仕事を減らしたことが、債務不履行及び不法行為に当たるとして、労働契約又は不法行為に基づき、月額30万円と平成22年7月から平成24年3月まで支払われた賃金との差額合計240万4468円、慰謝料200万円等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

賃金差額約236万円及び弁護士費用24万円の合計約260万円の支払を命じた

慰謝料については請求棄却

【判例のポイント】

1 XとY社との間の労働契約においては、Xの労働時間は予め定められていないから、一般的には、Xに対し一定時間以上の労働を命じることがY社の義務であるということはできない。しかしながら、Y社のバス従業員の給与は時給制であり、労働時間の多寡が各従業員の収入の多寡に直結するという本県事情の下においては、Y社が合理的な理由無く特定の従業員の業務の割り当てを減らすことによってその労働時間を削減することは、不法行為に当たり得ると解するのが相当である

2 ・・・このような事態を回避するために、各運転手の運転技術、接客態度その他の勤務態度を考慮して、配車するバスを決めるということには合理的な理由があると解され、Xには上記のような勤務態度上の問題があり、改善の意欲も十分ではないことも合わせ考慮すると、Xに対する配車を減らすという対応を取ることも理由がないとはいえない。
しかしながら、Xの月収は平成22年6月までは概ね30万円以上であったにもかかわらず、平成22年7月は25万円、平成22年3月までいずれも20万円を下回っており、Xの勤務態度に問題があったとしても、かかる大幅な配車の減少を長期にわたり続けることに合理的な理由があるかは疑問である

3 Y社は、無苦情・無事故手当、及び職務手当は、いずれも時間外労働に対する手当であるから、基礎賃金には含まれないと主張している。
ある手当が時間外労働に対する手当として基礎賃金から除外されるか否かは、名称の如何を問わず、実質的に判断されるべきであると解される。無苦情・無事故手当及び職務手当は、実際に時間外業務を行ったか否かにかかわらず支給されること、バス乗務を行った場合にのみ支給され、側乗業務、下車勤務を行った場合には支払われないことからすると、バス乗務という責任ある専門的な職務に従事することの対価として支給される手当であって、時間外労働の対価としての実質を有しないものと認めるのが相当である

非常に参考になる裁判例です。

上記判例のポイント1の視点は、是非、参考にしてください。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。