不当労働行為77(兵庫県・兵庫県労委(川崎重工業)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

さて、今日は、使用者に当たらないとして救済申立棄却命令の取消請求に関する裁判例を見てみましょう。

兵庫県・兵庫県労委(川崎重工業)事件(神戸地裁平成25年5月14日・労判1076号5頁)

【事案の概要】

Xの川崎分会に所属する組合員は、A社及びB社に雇用されて、労働者派遣契約や請負契約に基づき、Y社の工場で就労していたが、A社及びB社から解雇又は雇止めをされたため、Xが、Y社に対し、分会組合員の雇用に関する要求事項を掲げて団体交渉を申し入れたところ、Y社が分会組合員の使用者に当たらないことを理由に拒否したため、この行為が労働組合法7条2号(誠実交渉義務違反)の不当労働行為に当たるとして、処分行政庁に対し不当労働行為救済命令申立てを行ったが、処分行政庁は、Y社は分会組合員の使用者に当たらないと判断して本件申立てを棄却する命令をした。
本件は、Xが、本件命令を不服として、その取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 不当労働行為禁止規定(労働組合法7条)における「使用者」は、一般に、労働契約上の雇用主をいうものと解されるが、同条が団結権の侵害に当たる一定の行為を不当労働行為として排除、是正して正常な労使関係を回復することを目的としていることにかんがみると、雇用主以外の事業主であっても、雇用主から労働者の基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある場合には、その限りにおいて、同事業主は同条の「使用者」に当たるものと解するのが相当である(最高裁平成7年2月28日判決)。

2 ここでいう「使用者」は、労働契約関係ないしそれに隣接ないし近似する関係を基盤として成立する団体労使関係上の一方当事者を意味し、雇用主以外の者であっても、当該労働者との間に、近い将来において労働契約関係が成立する現実的かつ具体的な可能性が存する者もまた、これに該当するものと解すべきである

3 Y社が、派遣労働者であったDらと直接雇用契約を締結するかは、基本的にY社の有する採用の自由が及ぶ範囲内の事柄であり(このことはXも認めるところである。)、Y社が自ら直用化するか否かを決定することができるからといって、そのことから直ちにY社が使用者に当たると解することはできない。

4 労働者派遣が派遣法に違反する常体に至っている場合には、確かに派遣先において派遣労働者を直接雇用することは違法状態を解消し、派遣労働者の雇用の安定を図る一つの方策ではあるが、派遣労働者の雇用の安定を図る方策は直接雇用に限られるわけではないことに加え、派遣法40条の4は、派遣可能期間に抵触する等一定の要件を充たした場合に派遣先企業に派遣労働者に対する労働契約の申込みを義務付けているものの、当該申込義務は、派遣先企業が派遣労働者に対して負う私法上の義務ではなく、国に対して負う公法上の義務であって、派遣労働者はこれが履行された場合に反射的利益を受ける立場にあるにとどまると解される

5 本件では、A社が労働者を解雇する場面において、Y社は派遣解除通知をするに当たり減員人数を伝えるのみであり、派遣契約を解除される労働者を決定するのはA社であったことからすると、Y社は誰を解雇するかについてA社に対して影響力を及ぼしておらず、人選をA社の意向にゆだねていたものというべきであり、採用の場面でY社がA社に何らかの影響力を及ぼしていることはうかがえないのであって、単に業務の大半を依存しているという事実のみからY社を使用者と認めることはできない

労組法上の使用者性に関するオーソドックスな判断です。

違法派遣についての判断も、特に変わるところはありませんね。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。