賃金71(広島経済技術協同組合ほか(外国人研修生)事件)

おはようございます。

さて、今日は、中国人研修・技能実習生らによる未払賃金請求に関する裁判例を見てみましょう。

広島経済技術協同組合ほか(外国人研修生)事件(東京高裁平成25年4月25日・労判1079号79頁)

【事案の概要】

本件は、いずれも中華人民共和国の国籍を有し、出入国管理及び難民認定法における外国人研修・技能実習制度の下、第一次受入れ機関を原審Y1社、第二次受入れ機関をY2社として、本邦に入国し在留したXらが、Y2社の「相談役」の肩書きを有するY3に対し、Y3はY2社の名義を利用していたもので、研修期間及び技能実習期間を通じて、XらはY3と雇用関係にあったと主張して、未払賃金、労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めるとともに、Xら及び同様の立場にあったX2が、Y1社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求をした事案である。

原審は、Y3とXら及びX2との間に雇用関係があったと認め、XらのY3に対する請求並びにY1社ら及びX2のY1社に対する請求を、いずれも一部認容し、一部棄却した。

これに対し、Y3のみが控訴した。したがって、Xら及びX2のY1社に対する請求については、原判決が確定している。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】(以下、原審の判断)

1 労働契約法2条2項は、同法における「使用者」について、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいうと定義し、最低賃金法2条2号が準用する労働基準法10条は、同法における「使用者」について、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいうと定義する。これらの定義からすれば、前記各法における「使用者」とは、実質的に指揮命令をして労務の提供を受け、賃金を支払っていた又は支払うべき者をいうと解するべきであり、その前提として、会社の場合においては、これらの主体となり得る実態を有していることが必要である

2 ・・・以上からすれば、外国人研修・技能実習制度における研修生が、労働契約法及び最低賃金法上の労働者に当たるか否かについては、受入れ機関側における研修体制の構築の有無、実際に実施された研修内容・時間、特に非実務研修の実施の有無、その内容・時間のほか、研修生が研修手当を受領していた場合にはその手当についての認識等を総合考慮した上で、研修生が行った作業であっても、労務の提供として賃金の支払を受けるにふさわしいものであった場合には、前記労働者に当たるというべきである

3 外国人研修・技能実習制度の団体監理型における第一次受入れ機関は、研修を受けようとする者に対して、第二次受入れ機関が研修を適正に実施する体制を整えず、体制を備えることが全く期待できない場合にあっては、そもそもそのような機関に研修生を受け入れさせてはならない義務を負い、また、研修生に対して、自ら第一次受入れ機関として適正な研修を実施し、第二次受入れ機関による研修が研修計画どおり実施されているか、実質的な労働となっていないか等について監査し、これを指導し、管轄の地方入国管理局長に報告する義務を負うというべきである。

4 研修における第一次受入れ機関は、実態のない会社と雇用契約を締結しようとしていることを管轄する地方入国管理局長に報告しないなど、実習実施機関における不法就労を殊更助長しているといえる場合に限って不法行為責任を負うというべきである
Xらの研修における形式上の第二次受入れ機関であるY2社は、Y3が、研修生及び技能実習生の受入れ等の名義として用いたに過ぎない実態のない会社であって、Xらに研修を実施する体制は何ら構築されておらず、適正な研修体制が構築されることは到底期待することができない状況であったといえる。また、Xらが研修期間中に実際に行った作業は、技術、技能又は知識を修得させることを目的とするものではなく、実態として労働であったものである。これらの事情によれば、Y3がY2社を形式上の第二次受入れ機関としてXら研修生を受け入れた目的は、労働基準法及び最低賃金法の規定を潜脱し、同法所定の最低賃金を大きく下回る研修生1人当たり月額7万円程度の研修手当を支払うのみで労働力を得ることにあったことは明白であったといえ、Y1社は、Y2社がその組合員であること、Y1社担当者がXらの受入れに当たってY3と交渉していたことからすれば、上記のとおりXらを受け入れるにあたってのY3の目的を当然に認識していたことが認められる。

法の予定していない、研修制度の悪用であるという評価です。

妥当な判断だと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。