不当労働行為83(育良精機大阪工場ほか1社事件)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう!!

さて、今日は、労組法上の使用者性に関する命令を見てみましょう。

育良精機大阪工場ほか1社事件(中労委平成25年9月4日・労判1079号172頁)

【事案の概要】

Y1社は、茨城県つくば市に本社を、大阪府東大阪市内に工場を置き、高速道路用防音壁等にかかわる金属のプレス加工や板金加工等を行う会社である。

Y2社は、茨城県筑西市に本社を置き、金属製品製造業等を営む会社である。

Y1社は、従業員に対して、平成22年4月2日に特別一時金を、同年7月29日及び12月28日に夏季および年末一時金を支給した。Eを除くプレス板金担当の正社員7名に対する支給額をみると、特別一時金は、2万円がAほか1名で、他の5名は3万円であり、夏季一時金は、Aが27万円で、他は30万円台が2名、40万円台が4名であり、年末一時金は、Aが30万円で、他は30万円台が3名、40万円台が3名であった。

平成23年4月1日、組合は、Aに対する本件一時金の差別支給が不当労働行為であるとして本件救済を申し立てた。

【労働委員会の判断】

1 Y2社はAに対する関係で使用者の地位にない

2 Y1社が、Aの一時金をプレス板金担当正社員の中で最低額としたことは不当労働行為に該当する

【命令のポイント】

1 Y1社とY2社との間には、業務運営に関し一定の関係がうかがえる事実が認められるものの、両社には資本関係がなく、また、兼務役員はいるものの、丙社長やD専務はY1社の役員でもなく、同人らの行為をもってY2社がY1社の経営に支配力を有していたことの証左とまではいえないことからすると、本件工場が、Y2社の建材事業部の大阪工場という位置付けにあるということはいえない。また、本件工場の本件一時金の支給額の決定過程を踏まえると、Y2社がY1社の従業員の基本的な労働条件について、具体的かつ直接的な影響力ないし支配力を有していたとみることはできない
したがって、Y1社は、Y2社の正社員であるA組合員に対する関係において、使用者の地位にあったということはできないから、労組法7条の使用者には当たらない

2 Y1社は、一時金の査定に当たってあらかじめ定められた一貫性のある合理的な査定方法を採っているとは認められず、むしろその運用においても粗雑な査定を行っていたといえるものであり、また、A組合員の業務の専門性が低いことや時間外労働時間数が少ないことをもって、A組合員の査定を低く評価していることに合理性はなく、他に、査定が適正に行われたと認めるに足る証拠はないことからすれば、A組合員の本件一時金の額がEを除くプレス板金担当の正社員の中で最低額であることに合理性を認めることはできない。・・・以上によれば、労組法7条1号に該当する不当労働行為に該当する。

判例のポイント1の労組法上の使用者性については、ときどき争点になりますね。

規範がありますので、参考にしてください。

判例のポイント2で示されている一時金の金額の問題ですが、他の従業員との金額の差について客観的に合理的な説明ができない場合には、本件のように不当労働行為性を肯定されてしまう可能性がありますので、ご注意ください。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。