Daily Archives: 2014年1月29日

労働災害70(岡山県貨物運送事件)

おはようございます。

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←先日、SEの会社の経営者と沓谷にある「岩市」に行ってきました。

写真は、「太刀魚ねぎま」です。

おそば屋さんですが、一品料理がとってもおいしいお店です。

お店の場所が中心地より少し離れていますが、いつも混んでいます。 みんなおいしいお店を知っているわけです。 おいしゅうございました!

今日は午前中は、横浜の裁判所で財産開示の期日が入っています。

午後は、静岡に戻り、新規相談が3件、不動産に関する裁判の準備のための現地確認が入っています。

夜は、社労士の先生方を対象とした勉強会です。

今回のテーマは、「重要判例から読み解く組合による街宣活動等の差止請求のポイント」です。

今日も一日がんばります!!

さて、今日は、過重労働・パワハラによる新卒社員の自殺と損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

岡山県貨物運送事件(仙台地裁平成25年6月25日・労判1079号49頁)

【事案の概要】

本件は、Y車のC1営業所に勤務していたXらの長男Xが、連日の長時間労働のほか、上司のAからの暴行や執拗な叱責、暴言等のいわゆるパワーハラスメントにより精神障害を発症し、平成21年10月7日に自殺するに至った(当時22歳)と主張して、遺族である原告らが、Y社に対しては安全配慮義務違反の債務不履行又は不法行為によろう損害賠償請求権に基づき、Aに対しては不法行為による損害賠償請求権に基づき合計約1億2000万円を請求した事案である。

【裁判所の判断】

Y社に対し、合計約7000万円の支払を命じた。

Aに対する請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xは、ただでさえ新入社員として緊張や不安が多く、強い心理的負荷が掛かっている中で、本件自殺5か月前(入社約1か月後)から、月100時間程度かそれを超える恒常的な長時間時間外労働に従事させられ、本件自殺3か月前には月129時間50分にも上る時間外労働に従事させられ、さらには、そのような長時間労働に対して労いの言葉を掛けられることもなく、ただミスに対してAによる叱責のみを受け、将来に向けた明るい展望が持てなくなっていったことがうかがわれるのであって、総合的にみて、Xには業務により相当程度に強度の肉体的。心理的負荷が掛かっていたものと認めることができる

2 Xは、本件自殺3か月前には月129時間50分にも上る時間外労働に従事し、また本件自殺5か月前から月100時間程度かそれを超える恒常的な長時間の時間外労働に従事していたことに加え、内容的にも肉体的・心理的負荷を伴う業務に従事し続けたこと、さらにはAによる叱責や新入社員としての緊張や不安がXの心理的負荷を増加させたことによって、相当程度に強度の肉体的・心理的負荷が継続的に掛かった結果、平成21年9月中旬頃に適応障害を発病し、適応障害発症後も引き続き長時間の時間外労働への従事を余儀なくさせられ、適応障害の状態がより悪化する中で、同年10月6日、午後出勤の前に飲酒をするという問題行動を起こし、これがAを初めC1営業所の従業員に知られるところとなったことにより、Xの情緒を不安定にさせていた解雇の不安が増大し、それまでに蓄積した疲労と相まって、Xは正常な認識、行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態となり、自殺したものであり、このような経過及び業務以外に特段の自殺の動機の存在がうかがわれないことからして、本件自殺はXの業務に起因するものであったと認めるのが相当であるから、本件自殺と業務との間には相当因果関係があるということができる。

3 Y社は、Xが飲酒をして出勤し、その報告も怠ったことでAから叱責を受けるに至り、自ら命を絶ったという本件の経緯を考慮すれば、相当の過失相殺がされるべきである旨主張する
この点、確かに、飲酒をした上で車を運転して出勤したというXの行動は、社会的にも相当に非難されるべき問題行動であり、Y社が運送会社であるということからすればなおさらその問題性を重視すべきものである。しかしながら、・・・出勤前の飲酒は、適応障害を発症したことによる問題行動と評価できる。そして、業務の負荷以外の私的な出来事や個体側の要因に起因してこのような問題行動に至ったとはいえないことからすれば、Xの当該問題行動それ自体が、Y社の業務に起因して発病した適応障害の症状の一つであると評価すべきであり、同種の業務に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲を外れたXの性格により、このような問題行動に至ったとは評価できず、これをXの過失として評価することはできないというべきである。

時間外労働時間がこれだけ多いと、それだけで労災と判断され、また、会社の安全配慮義務違反を認定される可能性が高いといえます。

労働の質が争点となる事案に比べると、労働の量が争点となる事案は、労働者側に圧倒的有利です。

使用者側としては、従業員の労働時間が過大になっていないか、常に配慮すべきです。