派遣労働18(J社事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、元派遣等で就労していた期間労働者との間で黙示の雇用契約が成立していたとはいえず、雇止めも有効とした原判決を相当とした裁判例を見てみましょう。

J社事件(東京高裁平成26年6月4日・労経速2217号16頁)

【事案の概要】

本件は、A社に雇用され、当初、請負契約又は労働者派遣契約に基づきY社に勤務していたXらが、Y社との間で、期間の定めのある労働契約を締結したが、その後、契約更新がされず、その期間を満了したところ、Xらは、黙示の労働契約が成立していたこと又は、期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を前提としても、それは実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態であったことを理由に、Y社がXらに対する雇止めを行ったことが無効であると主張し、Y社に対し、労働契約上の地位の確認及びそれを前提とした賃金の支払を求めた事案である。

原審は、Xらの請求をいずれも棄却した。

【裁判所の判断】

控訴棄却

【判例のポイント】

1 Y社が、派遣労働者に再度戻す意図の下にクーリング期間として期間工という職種を新設したと認めるに足りる証拠はないし、Y社において、常用雇用の代替防止という労働者派遣法の根幹を否定するような施策を実施していたとは認め難く、XとA社との間の労働契約を無効とすべき特段の事情があると認めることはできない。
また、XらA社の労働者は、休暇届をA社に提出し、タイムカードはY社に直接雇用される正社員とは区別されていたなど、Y社の正社員と同様の労務管理がなされていたとも指揮命令を受けていたとも認めることはできないし、QCサークル活動への参加は義務付けられていないし、Y社が事実上A社の労働者の採用を決定していたとは認め難いし、Y社がXの賃金額の決定に関与したとも認め難く、XとY社間に実質的な賃金支払関係があったともいえない。そして、Y社が、Xの配転を決定していたと認めるに足りる証拠もない
以上によれば、XとY社との間に、黙示の労働契約が成立していたと認めることはできない

2 ①XとY社との直接の雇用契約が締結されていた期間は、1年7か月にすぎず、更新の回数は2回にとどまっていること、②Xを期間工として採用する際に、Y社が従前の使用従属関係を認めてこれを追認する意思で期間工として直接雇用したものとみることはできず、Xが期間工として採用される以前から、XとY社との間に雇用関係があったものと評価することはできないこと、③XとY社間の雇用及び契約更新の際に交付された雇用条件通知書や雇入通知書、雇用契約書のいずれにも、有期労働契約であることが明記されており、また、採用前の説明会等で、期間の定めや雇用延長条件等が記載された書面が読み上げられるなどしており、XとY社の労働契約は、期間の定めのあることが明確になっていること、④Y社における契約更新手続が形式的なものであったとはいえないことは、原判決が説示するとおりであり、Xの業務は、プラスチックケースにシールを貼る作業及びゴミ捨ての業務であったことが認められ、基幹的、恒常的なものということもできないから、Xにおいて、雇用を継続されることに合理的な期待を有していたと認めることはできず、Xが主張する整理解雇の4要件について検討するまでもなく、XとY社の労働契約は、平成21年4月25日の期間満了により終了したものと認められる。

どの事案でもそうですが、派遣先との黙示の労働契約を認定してもらうのは、とても大変なことです。

派遣元会社も派遣先会社も、対応に困った場合には速やかに顧問弁護士に相談することをおすすめします。