退職勧奨13(F社事件)

おはようございます。

今日は、顧問弁護士による退職強要の違法行為は認められないとして損害賠償請求を棄却した裁判例を見てみましょう。

F社事件(東京地裁平成27年1月29日・労経速2249号13頁)

【事案の概要】

本件は、Y社と雇用契約を締結し、Y社の営業開発本部長として勤務していたXが、Y社の顧問弁護士から不当に退職を強要され、退職せざるを得なくなったところ、当該退職強要が不法行為に当たり、当該不法行為によりXはY社から賃金を受領する権利を失い、また、精神的な損害を被ったと主張し、Y社に対し、不法行為に基づく損害賠償として①1年分の賃金相当額2400万円及び②慰謝料1000万円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、Y社が賃借人となり、Xが社宅として使用すべき本件マンションについて、Xの家族ではない女性を居住させており、かかる事実を指摘されたXは、これを認め、更に、このことがXによるY社の資金の私的流用に当たる旨C弁護士に指摘された上、更に他にもY社の経理処理に不正があるかもしれないので、Y社において調査を続行する旨説明された中で、C弁護士の求めに応じ、Y社があらかじめ用意していた書誌を使用し、Y社を退職する旨の意思表示を行った、というものである。
・・・本件面談後のXとC弁護士とのやり取りに照らすと、XはC弁護士に対して終始協力的な態度を見せており、これが、退職を強要した当の本人に対する態度であると理解することは困難である

2 結局、Xは、本件面談当時にC弁護士からの指摘により、本件マンションの使用方法が法的に問題となる可能性が高いものと認識し、かつ、この件のみならず、自らが本件会社の代表取締役であった頃の経理処理に幾つも問題(Xによる資金流用)のある可能性を指摘され、現在Y社において調査中であるという中で、XがY社において就労を続けるには、通常、困難を来すであろう状況が発生していることに鑑み、利害得失を考慮の上、自らの判断で退職することを決意したものとみるのが自然である

3 ここで、Xは、退職の意思表示をしなければ解雇されていたはずであり、退職勧奨の際には解雇事由が備わっている必要があるが、解雇事由が存在しないとも主張する。しかし、そもそも、本件面談においてY社はXに対し、解雇の可能性があることを全く述べていない。また、Y社においてあらかじめ退職届の用紙を用意していたこと等に照らしても、Y社がこのときXを解雇することまで予定していたとまでは認めるに足りず、Xの上記主張は採用の限りでない。

顧問弁護士が会社の代理人として退職勧奨をする場合、やり方如何によっては、(敗訴リスクはさておき)弁護士自らが訴訟当事者になる可能性(訴訟リスク)がありますので、注意が必要です。

今回のケースでは、特に退職を強要したと見られる事情はなかったため、損害賠償請求は棄却されています。