Daily Archives: 2016年3月4日

労働者性14(日本放送協会事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、放送受信料の集金等を行うスタッフの労働者性が否定された裁判例を見てみましょう。

日本放送協会事件(大阪高裁平成27年9月11日・労経速2264号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間においてY社の放送受信料の集金や放送受信契約の締結等を内容とする有期委託契約を継続して締結してきたXが、Y社から本件契約を途中解約されたことについて、本件契約は労働契約であり、上記解約(本件解除)は、労働契約法に基づかない無効な解雇であると主張して、Y社に対し、労働契約に基づき、労働者としての地位の確認、平成25年1月からの毎月27万5720円の賃金及び遅延損害金の支払を求めるとともに、不当解雇の不法行為に基づき、慰謝料等330万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を求めた事案である。

原判決は、本件契約は労働契約的性質を有するものであり、本件解約は労働契約法に基づかないなどの理由で無効であるものの、本件契約は平成25年3月31日の経過をもって終了しているとして、地位確認の訴えを確認の利益がないとして却下し、賃金請求を同年1月から同年4月までの分及び年5分の割合による遅延損害金の限度で認容し、その余の請求をいずれも棄却した。

このため、敗訴部分を不服とするY社が本件控訴を提起した。

【裁判所の判断】

Xの請求をいずれも棄却する

【判例のポイント】

1 本件契約により、Xは、契約開発スタッフとして、放送受信契約の新規締結や放送受信料の集金等契約上定められた業務を行うことを受託している。したがって、その定められた業務内容に関するものである限り、Xが個々の具体的な業務について個別に実施するか否かの選択ができるわけではない。もっとも、これは、包括的な仕事の依頼を受託した以上、契約上、当然のことと解される。本件では、業務の内容からして、Y社がXに対し特定の世帯や事業所を選び訪問すべき日や時間を指定して個別の仕事を依頼するなどということは、およそ予定されていないと考えられるから、Xに上記の選択権のないことを本来的な意味の諾否の自由の有無の問題ととらえるのは相当でない。

2 ①本件契約においては、諾否の自由の問題を取り上げるのは相当でなく、②Y社のスタッフに対する助言指導は、業績の不振を契機として主として稼働日数や稼働時間等についてされるものであり、限定された場面におけるものということができる。③本件契約上、1か月の稼働日数や1日の稼働日数は、スタッフの判断で自由に決めていくことができ、実際の稼働をみても、スタッフにより、時期により様々である。目標値はY社が設定するとしても、稼働時間に対する拘束性は強いものとはいえない。場所的拘束性も、訪問対象の世帯等がその地域内にあるというだけで、訪問以外の場面ではその地域内での待機を強いられるわけではない。④本件契約の事務費は、基本給とまではいえず、そのほかの給付も出来高払の性格を失っていない。⑤本件契約においては、第三者への再委託が認められており、実際にも再委託制度を利用している者がいた。⑥兼業は許容され、就業規則や社会保険の適用はない。なお、⑦本件契約による業務を遂行する上で必要な機材等はY社によって貸与されている

3 このように②から⑥まで、とりわけ、稼働日数や稼働時間が裁量に任されており、時間的な拘束性が相当低く、⑤のとおり、第三者への再委託が認められていることに着目すれば、⑦の事情を総合しても、本件契約が、労働契約的性質を有すると認めることはできない。

高裁は、原審判断とは異なり、NHKの集金スタッフの労働者性を否定しました。

労働者性に関する判断は本当に難しいです。業務委託等の契約形態を採用する際は事前に顧問弁護士に相談することを強くおすすめいたします。