Daily Archives: 2016年3月25日

解雇198(日本航空(客室乗務員)事件)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、休職をしていた客室乗務員に対する整理解雇に関する裁判例を見てみましょう。

日本航空(客室乗務員)事件(大阪地裁平成27年1月28日・労判1126号58頁)

【事案の概要】

本件は、被告の会社更生手続中に更生管財人が行った整理解雇の対象となった原告が、整理解雇は無効であるとして、①労働契約上の地位にあることの確認と、解雇後、平成23年1月支払期から本判決確定までの賃金の支払を求めるとともに、②原告に対する整理解雇や退職勧奨が違法なものであったとして、損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 本件整理解雇は、対象とされる労働者に解雇されるに足りる責めに帰すべき事由がないにもかかわらず行われるものである以上、仮に人員削減の必要性が肯定できるとしても、解雇されるか否かを分ける本件人選基準の設定については、もちろん使用者側の裁量が認められることは否定できないものの、恣意的なものであってはならず、解雇されなかった労働者との比較において、当該労働者に解雇を受忍させるに足りる合理性が必要というべきである。
本件整理解雇における人選基準は、(a)病欠・休職等基準(復帰日基準も含む)、(b)人事考課基準、(c)年齢基準で構成されている。
病欠・休職等基準については、客観的な基準をもって対象者を選定するものであり、Y社の恣意性が入る余地がないほか、私傷病等による休職・病欠がある者については、客観的な事実として、現実に一定期間就労していないのであるから、当該期間に休職・病欠することなく現実に勤務していた他の労働者と比較した場合に、Y社の業務に従事していないという点において、Y社に対する貢献度が劣ると評価せざるを得ないし(これは、当該労働者の業務遂行能力が、他の労働者と比較して劣るということを意味するものではない。)、また、将来の貢献度を想定するにあたっても、過去に休職・病欠がある者は、ない者と比較した場合に、相対的に劣る可能性があると判断することも、あながち不合理ともいえない

2 病欠・休職等基準該当者の中でその後に乗務復帰している者については整理解雇の対象から除外するという新たな対象者を絞る要件(復帰日基準)を付加した以上、その基準日については、手続的にできるだけ本件解雇通知に近い遅い時期とするのが合理的であり、同基準を付加した本件人選基準を示した本件人選基準変更日(同年11月15日)とすることに技術的・現実的な支障があることもうかがわれないにもかかわらず、少なくとも復帰日基準の基準日とした同年9月27日から復帰日基準を公表した同年11月15日の間に乗務復帰した者を、依然として、本件整理解雇の対象にとどめることには合理的な理由がないといわざるを得ない
・・・本件人選基準については、基準日の前後で本件整理解雇の対象になるか否か重大な差異が生じるからこそ、基準日の設定の合理性はより厳格に審査しなければならないのであって、そのことがY社の主張するような基準日の設定に関するY社の広範な裁量を根拠づけることにはならない。しかも、前記で判示したことは、単に基準日の前後で復帰日基準の適用の効果が分かれて不合理であるというのではなく、同基準を付加した趣旨とその基準日の設定が整合していないから不合理であるというものであって、Y社の上記主張は理由がない。

3 整理解雇が無効であり、雇用契約上の地位を有することが確認され、いわゆるバックペイが支払われることで、労働者としての地位が回復され、また、経済的損害も填補されることからすれば、整理解雇が解雇権の濫用に当たるとして無効となる場合であっても、そのことをもって直ちに不法行為が成立することになるものではなく、当該整理解雇が、当該労働者を排除することのみを目的としたり、当該労働者に対する嫌がらせとして行われたものであるなど、その手段・態様に照らし、著しく社会的相当性に欠けるものである場合に、不法行為に当たると解するのが相当である。
これを本件についてみると、本件整理解雇が解雇権の濫用として無効となるのは、Y社が当初の人選基準案を公表した後、その後、労働組合からの要望を受けて、復職日基準を追加して本件人選基準を公表したものの、復職日基準の基準日を人選基準が確定した日ではなく、当初の人選基準案を発表した日とした点が合理性を欠くと判断されたためであるものの、Y社によるそのような復職日基準の基準日の設定が、Xに対する嫌がらせであるなど著しく社会的相当性を欠くとまではいえず、ほかに、本件整理解雇が、著しく社会的相当性に欠けるものであることをうかがわせる事情があることを認めるに足りる証拠もない

ぎりぎりのところで無効となっている感じがします。

上記判例のポイント3に書かれているとおり、裁判所は、人選基準に合理性がないというところで解雇を無効としています。

裁判体が変われば解雇が有効と判断される可能性は十分残されていると思います。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。