配転・出向・転籍31(L産業(職務等級降級)事件)

おはようございます。

今日は、職務変更に伴うグレード格下げと賃金減額の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

L産業(職務等級降級)事件(東京地裁平成27年10月30日・労判1132号20頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であるXが、Y社が採用するいわゆる職務等級制の人事給与制度の下で、Y社によって職務を変更され、これに伴い職務等級(グレード)が降級され賃金が減額されたこと等について、当該措置が無効であるとして、降級前の等級(マネジメント職のグレード「E1」)につき労働契約上の地位を有することの確認、降級前後の月額給与の差額及び賞与の差額+遅延損害金の支払を求めるとともに、当該措置が違法であり、これによって精神的苦痛を被ったことを理由とする不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料+弁護士費用)+遅延損害金を、それぞれ求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Gチームの解散により、Xがそれまで就いていたGチームのチームリーダーの職務、役職自体はなくなったものであるから、Xを同チームリーダーの地位からはずすことについては業務上の必要性が認められる。また、Xが本件人事発令により就いた臨床開発部医薬スタッフという職務は、医薬情報部がXをチームリーダーとして受け入れられなくなって、急きょXに割り当てるポストを探したところ、臨床開発部の人員が足りないので、Xの配置先となったという経過からすると、Xをそこに配置する業務上の必要性自体は認められるというべきである。

2 確かに、上記異動時にはH部長からXに医薬情報部の元のポストに戻ることを念頭に置いた説明があったにもかかわらず、Gチーム解散時には専らH部長の反対によってXの上記ポストへの復帰が実現せず、本件人事発令に至ったとの経過が認められ、前言を翻したかのような配転、処遇を強いられたXにおいて、期待・信頼を裏切られたと考えても無理からぬところがあったといえる。
とはいえ、Gチームの解散時期すら当初は未確定であり、H部長の説明にしても、その間に事情変更が生じかねないことも織り込んだ上で、将来にわたる人事異動・配置の見とおしを述べた程度のものとみるべきであり、Y社においてXに対する何らかの義務を負うような合意が成立したとみることはできない。本件人事発令と同時期にJを医薬情報部チームリーダーに充てたことについても、XとJのいずれが適任であるかについては人事上の裁量判断に属し、Xがかつて同じポストに就いていたことや、XがGチームグループへ異動する際に上記のとおりの経緯、H部長の説明があったことだけでは人事上の裁量権の範囲の逸脱を基礎付けるに足りるものとはいえない。

3 もとより、ここで生じた減収を少額ということはできず、超過勤務手当の支払額は労働実態に呼応して変動し得る不確定なものであるとの事情も無視はできないが、本件人事発令により管理職に相当するマネジメント職の地位からはずれ、その職務内容・職責に変動が生じていることも勘案すれば、Xに生じた上記減収程度の不利益をもって通常甘受すべき程度を超えているとみることはできない

マネジメント職から一般職への配転命令に伴い、減収が生じる場合、どうしても訴訟リスクが高まります。

裁判所は、本件配転命令の有効性について、東亜ペイント事件最高裁判例の規範に基づき判断しています。

実際の対応については顧問弁護士に相談しながら慎重に行いましょう。