Daily Archives: 2017年2月2日

解雇222 解雇の無効と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、解雇無効地位確認請求と会社の不当利得返還請求に関する裁判例を見てみましょう。

日本ワールドエンタープライズ事件(東京地裁平成28年9月23日・労判ジャーナル57号16頁)

【事案の概要】

本件は、本訴事件において、Y社の元従業員がY社に対し労働契約上の権利を有する地位の確認並びに不法行為に当たる解雇に基づく損害賠償金、Y社の責めに帰すべき原因による欠勤又は無効な解雇で未払となっている賃金及び所定時間外、法定時間外、休日及び深夜の各労働に係る賃金の未払金の各支払を求め、反訴事件において、本訴事件の提訴が違法であり、Xには賃金の不正受給があったと主張して、本訴事件提起による損害の賠償及び賃金不正受給による不当利得の返還を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇は無効

【判例のポイント】

1 Y社は本件解雇を既に撤回し、元従業員もこれを了承し、自己の労働契約上の権利を有する地位の確認を求めているから、元従業員とY社との間では、本件解雇によって仮に労働契約終了の効力が生じていたとしても、少なくとも本件解雇の撤回により、従前の労働契約を復活させる旨の黙示の合意が成立しているというべきである。また、Y社は、他の労働契約終了の原因となる事実(再度の解雇等)も主張していないから、Xは、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にある。

2 Y社は、Xの欠勤がうつ状態等によるやむを得ないものであるにもかかわらず、職場復帰の可能性を十分に見極めず、Xとの協議を尽くしておらず、兼業・兼職のためY社での労務に従事していない状況が認められないのに、Y社の信用に悪影響を及ぼすような法令違反の有無、程度等も確かめることなく、Xに対する配慮不十分のまま、拙速に解雇に踏み切っているというべきであり、本件解雇は、十分に客観的に合理的な理由を備えておらず、その経過を併せて、社会通念上相当なものとはいえないから、本件解雇は解雇権を濫用したものとして無効というべきである(労契法16条)。

3 職場を奪う解雇の告知が労働者に相当な精神的衝撃を与えることは想像に難くないところ、既にうつ状態等で調子を崩していた元従業員にとって、本件解雇は、追い打ちになったと推認され、本件解雇を発端としてXとY社との紛争が顕在化・激化し、その間の信頼関係が損なわれ、本件解雇の撤回を経ても、円滑な職場復帰に向け、Xが不安を抱かざるを得ない状況になり、それがかねてからのうつ状態等に悪影響を与える可能性もあり、Xは相当の精神的苦痛を受けていることが認められ、また、本件解雇は、十分に客観的に合理的な理由を備えておらず、その経過も併せて、、社会通念上相当なものとはいえないことも考慮すれば、本件解雇は、不法行為としても違法であり、精神的苦痛に対する損害賠償を認めるべきというべきであり、さらに、Y社は、本件解雇を撤回しているが、事後に解雇を撤回したからといって、いったん成立した不法行為が消滅することはなく、Xの精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は金30万円と定めることが相当である。

慰謝料、安っ! いつものことですが。

解雇事案で慰謝料請求しても費用倒れになるので、解雇無効とバックペイの請求という方法以外は戦いづらいですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。