Monthly Archives: 4月 2017

解雇231 懲戒解雇と就業規則の周知性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、元調理師に対する懲戒解雇と割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

無洲事件(東京地裁平成28年5月30日・労判1149号72頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、食堂の委託業務等を行う会社であるY社に調理師として就労し、Y社から懲戒解雇された後、懲戒解雇は違法であり、かつ、在職中、Y社が安全配慮義務に違反してXに長時間労働を強いた上、労働基準法所定の割増賃金を支払っていない旨主張して、①労基法に従った平成24年7月から平成26年3月までの割増賃金+遅延損害金、②割増賃金に係る付加金、③違法な長時間労働に係る安全配慮義務違反の債務不履行に基づく損害賠償金+遅延損害金、④違法な懲戒解雇に係る不法行為に基づく損害賠償金+遅延損害金の各支払を求めている事案である。

【裁判所の判断】

1 Y社は、Xに対し、341万8250円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、298万7523円+遅延損害金を支払え。
 Y社は、Xに対し、30万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 本件においては、Xの出勤及び退勤時刻について、タイムカードの記録があるから、基本的には、タイムカードの打刻時刻手書き部分も含む。また、打刻時刻の記録がないときは、原則として、所定の始業時刻又は終業時刻によるものとする。)に基づいてXの実労働時間を認定するのが相当である。
しかし、タイムカードの打刻時刻は、実労働の存在を推定させるものであっても、直接証明するものではないから、所定の始業時刻及び終業時刻の範囲外の時間については、証拠関係に照らし、タイムカードの打刻時刻に対応するような実作業が存在したことについて疑問があるときは、証拠上認められる限度で実労働時間を認定することとする

2 本件におけるXの労働時間は、前記認定したとおりであり、Xの毎月の時間外労働の時間(1日8時間超過分と週40時間超過分の合計)は、平成24年8月から平成25年8月までの間、継続して、概ね80時間又はそれ以上となっている(タイムカード上は、これをはるかに超える。)。
Y社は、三六協定を締結することもなく、Xを時間外労働に従事させていた上、上記期間中、Y社においてタイムカードの打刻時刻から窺われるXの労働状況について注意を払い、事実関係を調査し、改善指導を行う等の措置を講じたことを認めるに足りる主張立証はない
したがって、Y社には安全配慮義務違反の事実が認められる。
本件においてXが長時間労働により心身の不調を来したことについては、これを認めるに足りる医学的証拠はなく、疲労感の蓄積を訴えるX本人の陳述があるのみである。しかし、結果的にXが具体的な疾患を発症するに至らなかったとしても、Y社は安全配慮義務を怠り、1年余にわたり、Xを心身の不調をきたす危険があるような長時間労働に従事させたのであるから、Xには慰謝料相当額の損害が認められるべきである。本件に顕れたすべての事情を考慮し、XのY社に対する安全配慮義務違反を理由とする慰謝料の額としては、30万円をもって相当と認める。

3 まず、使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくのみならず、当該就業規則の内容を、その適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られている必要がある(最高裁判所平成15年10月10日第二小法廷判決参照)。
本件において、Y社の就業規則が周知されていなかったことは争いがないから、本件懲戒解雇は労働者に周知されていない就業規則の定めに基くものとして、効力を有しないというべきである。
他方、本件懲戒解雇が、その根拠となる就業規則の周知性要件が具備されていなかったという手続的理由により無効と解されるとしても、そのことから、本件懲戒解雇が直ちに不法行為になるわけではない
むしろ、上記認定した事実に照らすと、Xは、平成26年2月、Y社から棚卸しの不実記載を指摘され、二度とこのような不実の報告はしない旨の書面を提出したにもかかわらず、その直後から、納品伝票の日付を実際の納品日から遅らせるということを継続して行っていたものである。
Y社が適切な経営判断を行うためには、食材原価について現場から正確な報告がされることが不可欠であり、この観点からは、Xが不実の報告を繰り返したことは重大な非違行為と評価されてもやむを得ない。
そうすると、本件懲戒解雇は、無効ではあっても、Xに対する関係で、不法行為を構成するような違法性がある行為であるとまでは認めることはできない。

残業代の支払のほかに安全配慮義務違反に基づき慰謝料の支払いを命じています。

多くの場合、残業代の支払いをもって填補されるという理屈をとるのですが、本件ではそのような理屈はとられていません。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介669 一流の魅せ方(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
会う人すべてがあなたのファンになる 一流の魅せ方

著者は、元国会議員秘書、選挙戦略家の方です。

どのような話し方、身だしなみ、気づかいにすれば人に好かれるのか、ということが書かれています。

印象がいい人というのはちゃんと理由があるのです。

『あんた、あのとき、よく『自分の判断でやりました』と言えたな。俺はな、あのときのあんたの言葉で、こいつは信用できるなと思ったんだよ。あのお局さんの指示だろう。そのくらいわかるよ」と言って笑ったのです。・・・どんなに苦しい失敗をしたときも、それを誰かや何かのせいにしたら、せっかく失敗した経験の意味を無くしてしまうという話でした。人のせいにせず、矢印は自分に向ける。そうすることで、嫌な出来事は、経験となって自分の力になる。信頼を高める要素とすることができる、という話でした。」(194~195頁)

他責ではなく自責の意識を持つということですね。

人のせい、環境のせい、制度のせいにしたくなることもありますが、それを口にした時点でダサいですよね(笑)

リーマンショックのせいでお客さんが減っているという飲食店とか(笑)

弁護士の数が増えてきたから依頼者が減っているという弁護士とか(笑)

ダサっ。

どれだけ不景気でも、どれだけ競争が激しくても、お客さんが並んでいるお店があるという現実を受け入れなければなりません。

退職勧奨15 違法な退職勧奨に基づく損害賠償請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、違法な退職勧奨に基づく損害賠償請求に関する裁判例を見てみましょう。

碧南市事件(名古屋高裁平成28年11月11日・労判ジャーナル59号22頁)

【事案の概要】

本件は、Y社で歯科医師として勤務していたXが、病院長による違法な退職勧奨を受けて退職せざるを得なくなったと主張して、病院を運営するA市に対し、国家賠償法1条1項に基づく、約4379万円等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

A市はXに対して、4078万9726円(減収分にかかる損害3167万7203円、退職手当にかかる損害911万2523円)+慰謝料50万円を支払え

【判例のポイント】

1 D教授は、Xに対し、Xが本件退職勧奨を応諾しない場合には、Xの下で診療等に従事する歯科医師について後任を派遣しない事態があることを告げたのであり、Xの下で診療に従事する歯科医師が派遣されないという事態は、病院に求められている水準の歯科診療を行うことが困難となることが確実であって、病院の歯科口腔外科部長として地域医療に従事するXにとっては、重大な不利益であるといえるところ、D教授が、Xに対し、上記の不利益を告知したことについては、本件退職勧奨の諾否にかかるXの自由な意思決定を促す行為として許される限度を逸脱し、その自由な意思決定を困難とするものであると認められるから、D教授が、C病院長の依頼に基づき、C病院長による本件退職勧奨の一環として、Xに対し、本件医局の関連病院の人事に関する影響力ないし事実上の権限をもって上記の不利益が生ずると告知して、暗に本件退職勧奨を応諾するよう求めたことは、少なくとも過失によりXの自由な意思決定を侵害する不法行為にあたる。

ドクターということもあり、損害額がかなり多額に及んでいます。

解雇を避けたいがために退職勧奨をするわけですが、やりすぎるとこのような結果となってしまいますので注意しましょう。

具体的な注意事項は顧問弁護士に確認しましょう。

本の紹介668 最速で結果を出す人の「戦略的」時間術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
最速で結果を出す人の「戦略的」時間術 (PHPビジネス新書)

タイトル通り、「結果を出す」人の特徴や行動傾向などがまとめられています。

結局、やるかやらないかの違いですので、どれだけ本を読んでもやらない人はいつまでたっても結果は出せません。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は25年間のビジネス人生において、多くの『結果を出せる人』を見てきたが、その多くの人に共通する条件として『結果を出すことに対する貪欲さ』というものがある。もちろん、結果を求めてがむしゃらに働くということもあるが、むしろ重要なのは『最後の一押し』であることが多い。つまり、ある程度頑張ったからといって納得してしまうのではなく、最後の最後まで手を抜かない、という姿勢である。」(53頁)

私が感じる「結果を出せる人」の特徴は、「継続する力」を持っているということです。

言い換えれば、人よりも仕事に対する情熱を多く持っているということです。

このブログでもよく書いていることですが、人は何かを継続することがとっても苦手です。

ある程度の期間であればなんとか続けることができるのですが、5年、10年と続けられる人はほんの一握りです。

途中で飽きちゃったり、疲れちゃったり、他のことに目移りしちゃったり・・・。

スポーツでも勉強でも仕事もなんでもそうですが、継続しなければ結果は出ません。

結果を出すために必要な準備を継続できる人は、必然的に結果を出していますね。

はっきり言って、もうそれだけの差なんだと思います。

解雇230 試用期間中の解雇が有効と判断された理由とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばっていきましょう。

今日は、試用期間中の解雇無効地位確認等請求に関する裁判例を見てみましょう。

A社事件(大阪地裁平成28年11月18日・労判ジャーナル60号88頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に新卒者として採用されたものの、見習期間(試用期間)中、業務遂行に必要なの魚力を著しく欠くとして、留保解約権に基づく解雇の意思表示を受けた元従業員が、Y社に対し、同解雇は解雇権の濫用であり無効であると主張し、労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、平成26年1月から本判決確定の日までの賃金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、毎日のように書損を発生させ、その都度指導教育しても、同じ過誤を繰り返し、その過誤の内容は、受取証の相手方の氏名記載欄に自分の名前を記載したり、誤った金額や預り目的を記載したりするなど、注意力の欠如が甚だしく、およそ金融機関の職員として弁解することができないものであり、また、Xは、研修が8か月目に至っても本人確認手続の内容さえ十分に理解しておらず、その後指導教育を継続したとしても、Y社の総合職の職員として必要な程度の職務能力を身につけさせることが著しく困難であることが予想され、さらに、Xは、顧客から通帳を受け取った際、預り証を渡さなかったり、定期預金について顧客の依頼とは異なる処理を行おうとしたりするなど、Y社の信用失墜を招きかねない行為も繰り返すなどの各事情にかんがみれば、Xは、総合職の新入社員に求められる職務能力を備えておらず、今後指導教育を継続しても、Y社の総合職の職員として必要な能力を身につけさせる見込みも立たなかったというべきであるから、本件解雇は、留保解約権の行使として客観的に合理的な理由があり、社会通念上も相当であるから、有効であるといえる。

ミスのレベルが非常に低いこと、何度も指導教育したのに改善されないことをちゃんと立証できるように訴訟前から準備しておくことが大切です。

こういう事案を見ると、つくづく採用試験や面接で適性を見抜くことの大変さを痛感しますね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介667 「リスト化」仕事術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
リスト化仕事術 毎日使えて一生役立つ

多くの方が、言われるまでもなく、日常生活や仕事において、大切なことを「リスト化」することが習慣になっていると思います。

この本では、「リスト化」の重要性のほかにいろいろなリスト化が紹介されています。

むしろこちらの方が参考になります。とてもおもしろい本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

人を動かす6つの影響力
・返報性ー人は、他者から何かを与えられたら自分も同様に与えるように努める。
・一貫性ー人は、自分の言葉、信念、態度、行為を一貫したものにしたい(あるいは他の人にそう見られたい)という欲求がある。
・社会的証明ー人は、他の人々が何を信じているか・どう行動しているかを見て、自分が何を信じるべきか・どう振る舞うべきかを決める。
・好意ー人は、自分が好意を感じている知人に対してイエスと言う傾向がある。
・権威ー人は、権威に服従しやすい。
・希少性ー人は、機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす。」(68頁)

それぞれの項目について身近な例がいくつも思い浮かびますね。

一般的に人はどのようなものを信用するのかということを知っておくことは大切です。

もっとも、あまりに露骨にやると胡散臭くなるので注意が必要です。

それとなくさらっと取り入れるのがいいですね(笑)

賃金129 「内勤手当」「外勤手当」は固定残業代として有効か?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ルート営業社員の各種手当と未払割増賃金等請求に関する裁判例を見てみましょう。

廣記商行事件(京都地裁平成28年3月4日・労判1149号91頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員であるXが、Y社に対して、未払時間外賃金+遅延損害金+付加金の支払いを求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、587万7709円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、300万円(付加金)+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 「内/外勤手当」が、どういう趣旨の手当として支給されるものかにつき、就業規則に定めがなく、他にY社の社内で周知されていたと認めるに足りる的確な証拠はない。また、X個人に限ってみても、職能給及び成果給の変動とは連動せずに一律2万円が支給されており、同手当がXが外勤業務に従事していることに由来して支払われていることはその名称から推測ができるものの、それを超えて時間外手当を補充する趣旨で支給されているとは認めるに足りる証拠はない。したがって、この点に関するY社の主張は採用できず、「内/外勤手当」も基礎賃金とするのが相当である。

2 CP手当は、午後8時から午後9時までに受注処理の当番が割り当てられたときに支払われる手当であると認められる。そして、毎日午前10時頃から配達に出発するという業務状況の下では、午後8時までに所定労働時間である8時間が経過していることが明らかであるから、CP手当は、時間外労働に対する給与として支払う趣旨であることが明確になっていると認められる。

CP手当についてなんとか固定残業代として認めてもらえましたが、「内/外勤手当」については上記のとおり、固定残業代とは認めてもらえませんでした。

固定残業制度は、今の裁判所の判断を前提とする限り、百害あって一利なしです。

リスクとリターンが全く見合っておりません。

導入を考えている社長は、悪いことは言いませんので、普通に残業代を支払うことをおすすめします。

残業代請求訴訟は今後も増加しておくことは明白です。素人判断でいろんな制度を運用しますと、後でえらいことになります。必ず顧問弁護士に相談をしながら対応しましょう。

本の紹介666 レバレッジ時間術(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
レバレッジ時間術―ノーリスク・ハイリターンの成功原則 (幻冬舎新書)

10年前に読んだ本をもう1度読んでみました。

「レバレッジ」という言葉からもわかるとおり、いかにして効率化を図るか、という内容です。

ゲーム感覚で取り組むとおもしろいですね。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

知識労働社会で求められているのは『時間内はまじめに働く』働き方ではなく、『同じ時間で、より効率的に働く』『同じ時間内で、より多くの成果を出す』働き方です。」(114頁)

私には、『Doing More With Less』というモットーがあります。日本語に訳せば『少ない労力でより多くの成果を』という意味です。・・・この言葉を目にするたびに、『時間を有効に使っているか』『どこかにムダはないか』と自分自身に問いかけています。」(146頁)

いわゆる「できる人」は、とにかく仕事が早いですね。

どうしたらもっと早く仕事が進められるかということを常に考えているような人たちです。

時間が有限であることを知っている人は、無駄をできるだけ省こうと工夫をします。

人生に無駄なことはないと言いますが、本当にそうでしょうか(笑)?

無駄なことをする言い訳に思うのは私だけでしょうか。

意識をしないと、多くの時間が無駄なことで埋まってしまう気がします。

だからこそ必要性を感じないことはできるだけ省き、また、そのような誘いは断る。

Time is money.

Life is short.

解雇229 訴訟において懲戒解雇事由を追加することの可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、タクシー乗務員らの普通解雇及び懲戒解雇無効等請求に関する裁判例を見てみましょう。

城南交通事件(富山地裁平成28年11月30日・労判ジャーナル60号74頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から普通解雇されたタクシー乗務員であったAが、普通解雇は無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、また、Y社から懲戒解雇されたBが、懲戒解雇は無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、さらに、Y社から普通解雇されたCが、普通解雇は無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

普通解雇及び懲戒解雇は無効

【判例のポイント】

1 Bに対する懲戒解雇事由①悪質かつ常習的な超過勤務、②運行記録に対する虚偽記載、③タコグラフ等の記録の不正操作、④経営者、上司、他の従業員に対する暴行、暴言及び脅迫、⑤会社の器物損壊、⑥交通事故の多発、⑦時速100㎞以上での暴走行為について、Y社は上記②から⑤までの事由を本件懲戒解雇の理由としてBに示さなかったのであるから、当該行為を懲戒の理由とはしなかったものと認めるのが相当であり、①に関しては、Y社がBの拘束時間規制違反を長期にわたり黙認しており、それどころかこれを助長するような行為をしていたこと、⑥については、各交通事故がBの故意又は重過失により生じたことについてはこれを基礎付けるに足りる事実の主張はないこと、⑦については、Y社が何度も注意していたにもかかわらず、Bが上記走行を続けていたことについては、証拠がないこと等から、Bに対する懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、その権利を濫用したものとして無効である。

懲戒解雇事由については、原則として訴訟係属後に追加主張することができませんので、懲戒解雇する際に漏れなくピックアップしておくことが求められます。

普通解雇の場合には、追加主張が認められていますが、だからといって決しておすすめするものではありません。

後になって追加する程度のたいした理由ではないと評価されるのがオチです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介665 インテリジェンストレーニング(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
インテリジェンス・トレーニング (青春文庫)

インテリになるためのトレーニング本です(笑)

サブタイトルは「魅力ある大人になるために」ですから内容はいたってまじめな本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

ちょっとパラドキシカル(逆説的)ですが、『自分を表現しようと思ったら、自分のことを言うな』ということがある。つまり、一番疲れるタイプの人というのは、常に自分のことばっかり話している人で、それも、自分だけでなくて、自分の子どものこと、自分の夫のこと、自分の親のこと、自分の会社のこと・・・まずは相手に話してもらうことが肝心です。相手の興味のあるポイントを話題に持ってきて、相手に好きなだけ話してもらう。それをうまく相づちを打ちながら聞く。」(14~15頁)

「話をしていて楽しい」と言われる人の特徴の1つがこれです。

会話のボールを持ちすぎないということです。

卓球やテニスのようにラリーをすることを意識している人は、総じて好印象です。

逆に、とにかく話が長い人、回りくどい人、結局何が言いたいのかよくわからない人(笑)は、話を聞いていて疲れます。

とはいえ、これはプライベートでのこと。

ビジネスにおいては、あくまで相手にできるだけ話をしてもらうように心がけます。

イメージとしては、ボールのポゼッション率は、相手8:自分2くらいがちょうどいいと思っています。

ビジネスにおいて求められる力は、聞く力8割、話す力2割というイメージです。