Daily Archives: 2017年4月4日

不当労働行為166 組合員に対する昇給、賞与支給の差別が不当労働行為とされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、組合員に対する昇給、夏季・年末賞与および決算賞与支給の差別が不当労働行為にあたるかが争われた事例を見てみましょう。

プリントパック事件(京都府労委平成28年7月19日・労判1145号156頁)

【事案の概要】

本件は、組合員に対する昇給、夏季・年末賞与および決算賞与支給の差別が不当労働行為にあたるかが争われた事例である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 組合に加入したことをY社に通知した後のX1組合員らの昇給及び賞与の取扱いと他の従業員及びそれまでのX1組合員らと昇給及び賞与の取扱いには明らかな差異が認められ、これに加えて、分会結成直後からY社には組合を嫌悪し、又は軽視する態度が認められることから、本件不支給等はX1組合員らが組合に加入した故をもってなされたものと、一応、推認することができる。

2 Y社は、本件不支給等は総労働時間を重要な考慮要素とした合理的な査定に基づくものと主張し、確かに、X1組合員らは本件不支給等の各査定期間において、総労働時間が他の従業員に比べて少ないことが認められる。
しかしながら、まず、Y社の昇給及び賞与に係る査定は、査定表による、社是・経営理念、勤務姿勢、休務日数及び貢献度等の項目の5段階評価により行われており、総労働時間は社是・経営理念の重要な考慮要素とされていると認められるが、その根拠となる個々の査定表等の資料は一切示されていない

3 Y社は、まず、X1組合員らに対し、時間外労働が減少するような措置を講じ、その後もX1組合員らの時間外労働について説明や対応を二転三転させながら、結局、時間外労働を行わせないようにし続けているものと認めざるを得ず、そうすると、そのようなY社の対応の下で、総労働時間を重要な考慮要素として行われた査定は公正さを欠き、合理的なものとはいえない。

組合員と非組合員との間に労働条件等に差が生じている場合、そこに合理的な理由が説明できるか否かが勝敗を決します。

曖昧な説明しかできない場合には不利益取扱いと判断されてしまいます。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。