Daily Archives: 2017年4月12日

セクハラ・パワハラ26 ハラスメント加害者の反省の程度と懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ハラスメント行為を理由とする懲戒解雇の有効性が争われた裁判例を見てみましょう。

Y社事件(東京地裁平成28年11月16日・労経速2299号12頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員であったXが、Y社の行った懲戒解雇が無効であると主張して、Y社に対し、雇用契約に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、平成27年8月以降本判決が確定するまでの間の賃金及び年2回の賞与の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

懲戒解雇は有効

【判例のポイント】

1 Xは、平成26年3月末にB及びDに対するハラスメント行為によりY社から厳重注意を受け、顛末書まで提出したにもかかわらず、そのわずか1年余り後に再度F及びEに対するハラスメント行為に及んでおり、短期間に複数の部下に対するハラスメント行為に及んだ態様は悪質というべきである。また、Xによる上記行為の結果、Fは別の部署に異動せざるを得なくなり、Eに至っては適応障害に罹患し傷病休暇を余儀なくされるなど、その結果は重大である。

2 Xは、2度目のハラスメント行為に及んだ後も、自身の言動の問題性を理解することなく、あくまで部下への指導として正当なものであったとの態度を一貫して変えず、全く反省する態度が見られない。Xは、本人尋問において、1回目のハラスメント行為後のJらによる厳重注意について、「緩い会話」であったと評しており、この点にもXが自身の言動の問題性について軽視する姿勢が顕著に現れているというべきである。また、Xの陳述書や本人尋問における供述からは、自身の部下に対する指導方法は正当なものであり間違っていないという強固な信念がうかがわれ、Xの部下に対する指導方法が改善される見込みは乏しいと判断せざるを得ない。
このように、Xは、部下を預かる上司としての適性を欠くというべきである。

上記判例のポイントのように、訴訟における原告の主張や本人尋問の内容から原告が反省していないこと、自身の言動は正しかったという偏った考え方への固執を明らかにし、懲戒解雇等の処分の正当性を補足することができます。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。