Daily Archives: 2017年4月18日

解雇229 訴訟において懲戒解雇事由を追加することの可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、タクシー乗務員らの普通解雇及び懲戒解雇無効等請求に関する裁判例を見てみましょう。

城南交通事件(富山地裁平成28年11月30日・労判ジャーナル60号74頁)

【事案の概要】

本件は、Y社から普通解雇されたタクシー乗務員であったAが、普通解雇は無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、また、Y社から懲戒解雇されたBが、懲戒解雇は無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金等の支払を求め、さらに、Y社から普通解雇されたCが、普通解雇は無効である旨主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

普通解雇及び懲戒解雇は無効

【判例のポイント】

1 Bに対する懲戒解雇事由①悪質かつ常習的な超過勤務、②運行記録に対する虚偽記載、③タコグラフ等の記録の不正操作、④経営者、上司、他の従業員に対する暴行、暴言及び脅迫、⑤会社の器物損壊、⑥交通事故の多発、⑦時速100㎞以上での暴走行為について、Y社は上記②から⑤までの事由を本件懲戒解雇の理由としてBに示さなかったのであるから、当該行為を懲戒の理由とはしなかったものと認めるのが相当であり、①に関しては、Y社がBの拘束時間規制違反を長期にわたり黙認しており、それどころかこれを助長するような行為をしていたこと、⑥については、各交通事故がBの故意又は重過失により生じたことについてはこれを基礎付けるに足りる事実の主張はないこと、⑦については、Y社が何度も注意していたにもかかわらず、Bが上記走行を続けていたことについては、証拠がないこと等から、Bに対する懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、その権利を濫用したものとして無効である。

懲戒解雇事由については、原則として訴訟係属後に追加主張することができませんので、懲戒解雇する際に漏れなくピックアップしておくことが求められます。

普通解雇の場合には、追加主張が認められていますが、だからといって決しておすすめするものではありません。

後になって追加する程度のたいした理由ではないと評価されるのがオチです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。