有期労働契約71 貸与物の私的利用を理由とする雇止めの有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

来週一週間は出張のため、ブログはお休みいたします。

今日は、契約更新への期待と貸与物の私的利用による雇止めに関する裁判例を見てみましょう。

大阪ガス・カスタマーリレーションズ事件(大阪地裁平成28年12月22日・労判ジャーナル61号11頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で、有期雇用契約を締結し、その後に更新を繰り返していた元従業員Xが、契約の更新がされなかったことについて、本件不更新は期間の定めがない労働契約における解雇と同視しうるものであるうえ、Xは契約の更新がされることに合理的な期待を有していたところ、本件不更新は合理的理由を欠き、社会通念上相当なものとは認められないとして、労働契約法19条に基づき、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とそれを前提とした賃金の支払い等を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件では、XとY社の間では、契約更新の手続きが形式的なものであるとか、形骸化していたとまで認めることはできないから、有期雇用契約を終了させることが、期間の定めのない雇用契約を締結する労働者に対する解雇と同視できるとまでいうことはできず、労働契約法19条1号に該当するとは認められないが、他方において、雇用契約書に契約更新がありうる旨が記載され、すでに3度の更新がされていること、D事務所においては、過去に更新を希望しながら更新がされなかった者はいないこと等の事情を総合すれば、Xが契約期間の満了時に有期雇用契約が更新されることには、合理的な理由があると認められるから、労働契約法19条2号には該当する。

2 Xは、貸与バイクを私的に利用し、その頻度も少ないとはいえないうえ、その際には私的利用を含めてY社から貸与を受けた給油カードで給油をすることがあったものであり、さらには、私的利用が発覚しないようにするため、ドライブレコーダーからSDカードを抜き、隠蔽を図っていたほか、長期間にわたって走行カードに事実と異なる記載をしていたものであり、加えて、少なくとも1年以上の長期にわたって、勤務時間中にA診療所で業務を行っていたものであり、これらXの行為は、その内容や程度に照らせば軽微なものとはいえず、Y社との信頼関係を著しく損なうものといわざるを得ないこと等から、Y社が掲げる雇止め事由のうち、以上の各点のみをもってしても、Y社が本件雇用契約を締結しないとの判断に至ることは不合理とはいえず、本件雇止めが合理的理由を欠くとか、社会通念上の相当性を欠くと評価することはできない

有期雇用契約における雇止めに関する労働契約法19条については、まず1号・2号該当性が問題となります。

各号の判断のしかたについてはこれまでの裁判例を参考にして、トラブルを未然に回避できるように準備をすべきです。

1号、2号のいずれかに該当する場合には、解雇に関する労働契約法16条と同様に合理的理由と相当性の判断をすることになります。

1号と2号で判断の厳格さが異なるという見解もある(2号のほうが緩やか)ことに留意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。