Monthly Archives: 6月 2017

本の紹介688 マレーシア大富豪の教え(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は本の紹介です。
マレーシア大富豪の教え

決して小手先のテクニックを扱ったハウツー本ではありません。

仕事や人生についての基本的な考え方について書かれています。

おすすめです。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

私は、人生においては『根性』が非常に大切だと考えています。人間誰にでも、逆境や苦境は何度も訪れます。そのときに腐らずに、しっかり生き抜いていく。どんなにひどい目にあっても我慢して、誰よりも努力を続ける。この姿勢を持ち続けられる人でなければ、ビジネスにおいても人生においても、何事かを成し遂げることはできないでしょう。・・・元経団連会長の土光敏夫さんの『人間の能力に大きな差があるわけではない。差があるとすれば、根性の差である』という言葉は、若い頃から私の座右の銘でした。」(245頁)

誰よりも努力を続けることは、誰にでもできることではありません。

1日だけならできるでしょうが、それを毎日毎日「続ける」ことは多くの人が苦手とするところです。

これは生まれ持った「能力」の問題ではありません。

必要なのは「根性」とほんの少しの「技術」です。

続けることができれば、必ず結果は出ると確信しています。

やるかやらないか。 続けるか途中でやめるか。

ただそれだけです。

解雇236 内部告発を理由とする懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、内部告発を理由とする短大准教授の懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人常葉学園(短大准教授・保全抗告)事件(東京高裁平成28年9月7日・労判1154号48頁)

【事案の概要】

基本事件は、Y社から懲戒解職されたXが、Y社に対し、上記懲戒解職が無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めることの仮処分命令の申立てをした事案である。
静岡地方裁判所は、平成27年7月3日、基本事件について、Xが,Y社に対し,労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める旨の仮処分決定(以下「本件仮処分決定」という。)をした。これに対し、Y社は、保全異議を申し立てた。
原審は、平成28年1月25日、本件仮処分決定が相当であり、Y社の異議申立ては理由がないとして、本件仮処分決定を認可する旨の決定をした。これに対し,Y社は本件抗告をした。

【裁判所の判断】

抗告棄却

【判例のポイント】

1 本件告訴に係る告訴事実は、捜査機関が捜査に着手すれば、その内容が、マスコミも含めた外部に漏れる可能性もある以上、本件告訴は、Y社の社会的評価の毀損をもたらすものであり、Y社の事業活動に支障をきたすおそれもあることから、告訴事実がないことを容易に認識し得たにもかかわらず、Xが行った本件告訴は、非違行為として、就業規則58条1項2号の「学園の秩序を乱し,学園の名誉又は信用を害したとき」に当たるものというべきである。

2 本件懲戒解雇は、Y社が就業規則58条2項において規定する懲戒処分の中で最も重いものであり、教員あるいは研究者として、他へ就職することも困難となることは容易に予測することができることから、本件懲戒解雇の相当性については、慎重な検討が必要である。

3 Y社は、本件告訴に係る告訴事実について不起訴処分となった後に速やかにXに対する懲戒処分の手続に着手しておらず、むしろ、Xの公益通報によって、Y社の補助金受給に問題があることが明らかになり、これが新聞報道された後に、懲戒処分の手続に着手し、本件懲戒解雇を行ったものであって、本件懲戒解雇がXの公益通報に対する報復であるとまでは認定することができないものの、上記の経過事実に照らせば、その可能性は否定することができない
また、本件告訴に係る告訴事実は不起訴処分になったものの、本件告訴がマスコミも含め、外部に漏れたとは認められず、本件告訴によってY社の社会的評価が大きく毀損されたとはいえない
さらに、Xにおいて、本来の職務である授業及び研究において、その適格性を疑わせるような事実が認められないことを考慮するならば、組織秩序維持の観点からみて、本件告訴に関してのXの非違行為に対する懲戒処分としては、本件懲戒解雇より緩やかな停職等の処分を選択した上で、Xに対し、教職員としてとるべき行動について指導することも十分に可能であったということができる。
以上のような事情を考慮すると、本件懲戒解雇は重きに失するといわざるを得ない。

4 Xは、教育・研究活動に従事する者であり、Y社の教職員の地位を離れては、Xの教育・研究活動に著しい支障が生ずることは明らかであり、Y社との間で、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めなければ、Y社に回復し難い著しい損害が生じるものというべきである

地元静岡の事案です。

相当性の要件でぎりぎり拾われていますが、いずれにしても懲戒解雇が無効であることに変わりありません。

この事案の特徴は、上記判例のポイント4です。

通常なかなか認められない地位保全の仮処分が認められていますね。 

こういう場合に認められるのですね。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介687 人生を変える80対20の法則(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
新版 人生を変える80対20の法則

みなさんご存じの「パレートの法則」についてさまざまな角度から書かれています。

この法則それ自体は特に難しいものではありませんが、応用可能性は多岐にわたるため、新しい切り口を知るには良い本です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

生産性が低い分野から生産性が高い分野に資源を移していくのが、起業家の仕事であり、自由市場の本来の役割である。しかし、起業家も市場もその役割を十分果たしているとは言えない。複雑な企業や官僚組織は言わずもがなだ。どこを見渡しても無駄が多い。しかも呆れるほど多い。資源の80%は、価値の20%しか生み出していない。したがって、真の起業家のまえには、つねに裁定機会がある。そして裁定機会は、通常思われているより、はるかに多い。」(192頁)

私の知る限りでも、公務員、保守的かつ大きな会社は、傍から見ていて、本当に無駄が多いと思います。

代表例は会議の長さです。

会議をやること自体がもはや目的化しているため、無駄に長い。

しょっちゅう会議をしている。 それも長時間。

だから、本来やらなければならない仕事をやる時間がなくなり、無駄に残業をしなければならなくなる。

労働時間を減らさなければならない昨今、無駄な会議をやっているほど時間的余裕はないはずです。

会議が死ぬほど嫌いな僕の独り言でした。

賃金135 退職金減額と労働者の同意の効力(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、吸収合併に伴う消滅信組元職員の退職金減額の効力に関する裁判例を見てみましょう。

山梨県民信用組合(差戻審)事件(東京高裁平成28年11月24日・労判1153号5頁)

【事案の概要】

本件は、A社の職員であったXらが、A社とY社との平成15年1月14日の合併によりXらに係る労働契約上の地位を承継したY社に対し、退職金の支払を求めた事案である。

原審(甲府地判平成24年9月6日)がXらの請求をいずれも棄却したので、Xらがこれを不服として控訴をしたが、差戻し前の控訴審(東京高判平成25年8月29日)は、Xらの控訴をいずれも棄却した。

これに対し、Xらが上告受理の申立てをしたところ、最高裁判所は、これを受理した上、平成28年2月19日、上記控訴審判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻すとの判決を言い渡した。

【裁判所の判断】

請求をほぼ全額認容

【判例のポイント】

1 ・・・このような本件基準変更による不利益の内容等及び本件同意書への署名押印に至った経緯等を踏まえると、管理職Xらが本件基準変更への同意をするか否かについて自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられていたというためには、管理職Xらに対し、旧規程の支給基準を変更する必要性等についての情報提供や説明がされただけでは足りず、自己都合退職の場合には支給される退職金額が0円となる可能性が高くなることや、Xの従前からの職員に係る支給基準との関係でも上記の同意書案の記載と異なり著しく均衡を欠く結果となることなど、本件基準変更により管理職Xらに対する退職金の支給につき生ずる具体的な不利益の内容や程度についても、情報提供や説明がされる必要があったというべきである。

2 本件労働協約は、本件職員組合の組合員に係る退職金の支給につき本件基準変更を定めたものであるところ、本件労働協約書に署名押印をした執行委員長の権限に関して、本件職員組合の規約には、同組合を代表しその業務を統括する権限を有する旨が定められているにすぎないから、上記規約をもって上記執行委員長に本件労働協約を締結する権限を付与するものと解することはできない
そこで、上記執行委員長が本件労働協約を締結する権限を有していたというためには、本件職員組合の機関である大会や執行委員会により上記の権限が付与されていたことが必要であると解される。
これを本件についてみると、・・・本件基準変更を定めた本件労働協約の効力は、組合員Xらに及ばない。

3 この点、Y社は、・・・本件労働協約の締結について追認(民法116条)がされたと主張する。
しかしながら、非管理職向けの職員説明会において、J常務理事が、自己都合退職の場合には支給される退職金が0円となる可能性が高くなることや、Y社の従前からの職員に係る支給基準と比較すると同一水準にはなっていないことなど、本件基準変更により職員に対する退職金の支給につき生ずる具体的な不利益の内容や程度についての情報提供や説明をした事実は認められない
そうすると、Iや組合員Xらを含む本件職員組合の組合員においては、本件基準変更に同意をするか否かについて自ら検討し判断するために必要十分な情報を与えられていなかったというべきであるから、Iが、合併後の労働条件について管理職と同じ内容の労働協約を締結した旨を報告し、その報告に対して他の組合員から質問や異議が出なかったことをもって、本件職員組合の機関である大会又は執行委員会により本件労働協約の締結の権限がIに付与されたとみることはできない。

最高裁判決を踏まえてこのような判断となりました。

労働条件の不利益変更を行う場合には、まずは従業員から同意を得ることを考えますが、その際、上記判例のポイント1を是非参考にしてください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。

本の紹介686 限界はあなたの頭の中にしかない#2(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は本の紹介です。
限界はあなたの頭の中にしかない

ジェイ・エイブラハムさんの本です。

いつもながらヒントがたくさん詰まった本です。

あとは実行に移すかどうかだけの問題です。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

・・・しかし、多くの人はそれをやりません。自分の居心地の良い世界から出ようとしません。ゴールの設定もしません。メンターも持ちません。成長の決意をしません。それで現状から抜け出せるはずがないのです。同じような背景の人間ばかりが集まるセミナー。同じような顔ぶれの社交界や飲み会。仕事関係以外での親交は乏しく、いつも同じような話ばかり。景気が悪いから売れないのはしかたないと皆が言う。そんな日常で、あなたが正しい場所に行けるわけがありません。」(199頁)

まったくもって仰るとおりとしか言いようがありません。

そもそも今の自分から変わりたい、自分の商品価値を今以上に上げたいと考えながら日々の生活を送っているという人は思っているほど多くないような気がします。

また、自分の価値を向上させたいと願っていても、継続的に何か行動している人はその中のさらにほんの一握りです。

今の自分を変えたければ、日々の行動を変えるしかありません。

今までと同じ生活をして、今までと違う結果を望む。

人はこれを「わがまま」と呼びます。

結果を出したければ、人よりも早く起き、人よりもハードワークをする。

凡人の勝ち方はこれしかないと思っています。

不当労働行為169 労組加入を理由とする契約終了の不当労働行為該当性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、労組加入を理由として契約を終了したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案を見てみましょう。

明石被服興業事件(山口県労委平成28年12月8日・労判1152号90頁)

【事案の概要】

本件は、労組加入を理由として契約を終了したことが不当労働行為にあたるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

不当労働行為にあたる

【命令のポイント】

1 Y社は、平成27年4月15日(Xが組合に加入する前)に、Xを含めたデサント業務従事者全員に対し、・・・デサント業務を同年7月31日で終了すると通知したのであるから、これにより同年7月31日までの契約継続を約束していることは明らかである。
それにもかかわらず、Y社がXと同様な立場にある非組合員3名については同年7月31日までの契約を維持している一方で、同年5月31日をもってXとの本件契約を終了すると主張し、その労務提供を禁止したことは、組合員であるXに対する不利益取扱いである。

2 デサント業務従事者のうち、平成27年8月以降、G作業所でパート採用された2名は、当該応募手続きを経たのに対し、Xは、工場長らから、応募の意向があれば手続きを要すること及び応募者多数の場合、その中から選考することになる旨の説明等は受けたが、採用確約の言質までは得られず、Xが応募を諦めたため、採用に至らなかったという経過は明らかであり、Y社が組合員であるXを不利益に取り扱ったものとは認められない
また、Y社がXのみを特別扱いにするなどの求めに応じることなく優先的に扱わなかったからといって、その対応が不当なものであるとはいえない。

上記命令のポイント1のように組合員と非組合員の取扱いに明らかな区別が認められる場合、その区別を合理的に説明できなければ不当労働行為となります。

注意しましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介685 金持ち脳でトクする人 貧乏脳でソンする人(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
金持ち脳でトクする人 貧乏脳でソンする人 (PHP文庫)

著者は投資家の方です。

「金持ち脳」と「貧乏脳」を比較しながら、著者が考える「一生お金に困らない」考え方を説いています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『君には無理だよ』という人の言うことを、聞いてはいけない
もし、自分でなにかを成し遂げたかったら
出来なかった時に他人のせいにしないで
自分のせいにしなさい
多くの人が、僕にも君にも『無理だよ』と言った
彼らは、君に成功してほしくないんだ
なぜなら、彼らは成功出来なかったから
途中で諦めてしまったから
だから、君にもその夢を諦めてほしいんだ
不幸なひとは、不幸な人を友達にしたいんだ
決して諦めては駄目だ
自分のまわりをエネルギーであふれ
しっかりした考え方を、持っている人でかためなさい
自分のまわりを野心であふれ
プラス思考の人でかためなさい
近くに誰か憧れる人がいたら
その人に、アドバイスを求めなさい
君の人生を、考えることが出来るのは君だけだ
君の夢がなんであれ、それに向かっていくんだ
何故なら、君は幸せになる為に生まれてきたんだ
何故なら、君は幸せになる為に生まれてきたんだ」(98~100頁)

これは、NBAで活躍したマジック・ジョンソンの言葉だそうです。

「無理だよ」「やめとけ」という人の意見を聞いてはいけません。

というより、本当にやりたいのなら、他人に相談してはいけません。

他人に「無理だよ」「やめとけ」と言われたらやめるのですか?

その程度でやめるくらいなら、やめといたほうがいいかもしれません。

他人に相談と言いつつ、つまるところ、背中を押してほしいだけなのです。

甘えん坊かと。

時間泥棒かと。

もう自分でやると決めたことは誰にも相談せずに黙ってやればいいのです。

失敗するかもしれませんが、そんなの相談したって失敗するときには失敗しますから。

うまくいくかいかないかなんてやってみなければわからないですよ。

「絶対うまくいかない」と言われて、大成功している例なんていくつもあるじゃないですか。

まあ、そんなことを思って生きています。

解雇235 長年にわたる住宅補助費の不正受給を理由とする懲戒解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、長年にわたる住宅補助費の不正受給を理由とする懲戒解雇に関する裁判例を見てみましょう。

ドコモCS事件(東京地裁平成28年7月8日・労経速2307号3頁)

【事案の概要】

本訴事件は、Y社が、その社員であったXらに対し、Y社から住宅補助費を不正に受給したとして、Y社の就業規則における賃金精算の定め、詐欺による取消し若しくは錯誤無効に基づく不当利得又は不法行為に基づき(選択的併合)、住宅補助費相当額の金銭支払(X1につき平成24年10月分から平成25年3月分までの合計37万6800円、X2につき平成23年2月分から平成24年9月分まで及び平成25年5月分から同年10月分までの合計163万2800円)を求める事案である。

反訴事件は、Xらが、住宅補助費の不正受給を理由とする懲戒解雇は無効であるとして、労働契約及び不法行為に基づき、労働契約に関する地位の確認、未払の毎月の賃金及び特別手当の支払並びに損害賠償を求める事案である。

【裁判所の判断】

X1は、Y社に対し、金37万6800円を支払え。

X2は、Y社に対し、金138万1600円を支払え。

Y社のX2に対するその余の本訴請求及びXらの反訴請求をいずれも棄却する。

【判例のポイント】

1 懲戒解雇は、就業規則に懲戒解雇に関する根拠規定が存しても、当該懲戒解雇に係る労働者の行為の性質及びその他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その権利を濫用したものとして無効となる(労働契約法15条、16条)。
懲戒解雇は最も重い懲戒処分であり、雇用契約上の権利を有する地位の喪失のみならず、労働者の名誉に悪影響を与え、退職金の支給制限等の経済的不利益を伴うことが多いから、懲戒権の行使の中でも特に慎重さが求められる

2 Xらの住宅補助費申請は少なくとも萩中建物に係るものは住宅補助費の支給要件を満たさない上、Xらは少なくとも未必の故意をもって、共謀の上、その居住実態を偽って住宅補助費を不正に受給している。
その不正受給は、平成18年から平成25年まで7年以上、五百数十万円に及び、過誤取扱通達で返納の対象となり、かつ、まだ返納されていないものだけでも金175万8400円となる
Xらの萩中建物に係る住宅補助費の申請は申請書、賃貸借契約書等を精査しても予想困難な居住関係及び権利関係を秘したものであるから、Y社が長年これに気付かず、住宅補助費を支給していたことをXらの有利に斟酌すべきではない
Xらが利得する一方、Y社が受けた財産的被害は多額であり、両者間の信頼関係を著しく破壊するものといわなければならない。

3 労働者は自身の労働契約上の義務に違反する行為に関し、使用者が調査を行おうとするときは、その非違行為の軽重、内容、調査の必要性、その方法、態様等に照らして、その調査が社会通念上相当な範囲にとどまり、供述の強要その他の労働者の人格・自由に対する過度の支配・拘束にわたるものではない限り、労働契約上の義務として、その調査に応じ、協力する義務があると解される
その調査の過程において、芳しくない態度、ことに虚偽の供述など、積極的に調査を妨げる行為があった場合は、信頼関係をますます破壊し、反省、改善更生といった情状面の評価において、不利益に重視されることもやむを得ないというべきである
X1は、Y社の事情聴取において、事実関係に関する虚偽の供述を複数回にわたって繰り返しており、X2もこれに同調する態度を示し、自分たちの独自の見解に固執して、不法行為に基づく損害賠償及び不当利得の返還請求権からは大幅に減額されている過誤取扱通達の範囲内の返還にも応じていない。Y社は、Xらに対し、慎重に調査を進め、事情聴取も少なからず実施し、被告らに弁明の機会も十分に与えて、慎重な検討を経て本件解雇を決定したと認められる。

4 ・・・懲戒解雇は懲戒権の行使の中でも特に慎重さが求められることを考慮しても、Y社がXらに対し本件解雇をもって臨んだことが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合に当たるとはいうことはできない。

上記判例のポイント3は頭に入れておきましょう。

調査過程における協力の有無、程度についても解雇の有効性を基礎付ける事情となるということです。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。

本の紹介684 33歳で資産3億つくった僕が43歳であえて貯金ゼロにした理由(企業法務・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は本の紹介です。
33歳で資産3億つくった僕が43歳であえて貯金ゼロにした理由 使うほど集まってくるお金の法則

著者の本で「33歳で資産3億円をつくった私の方法」というものがありますが、今回の本は「お金をどんどん使いましょう。」という内容です。

投資対象は人それぞれだと思いますが、私は、自分に投資するのが最もリターンが大きいと思っています。

さて、この本で「いいね!」と思ったのはこちら。

『見栄はコストなり』と言われるとおり、他人によく思われようとすると、際限なくお金が出ていくことになります。見栄にお金を払う人は、経験よりも『モノ』にお金を使う傾向があります。経験は他人には見えませんが、モノは他人から見えるからです。・・・住んでいる家、持っているモノ、子どもの服や学校に至るまで、本当に自分が価値を認めたものなのか、あるいは他人の目を意識したものかをはっきり区別し、自分の価値判断基準を尊重する心の強さを持つことは、精神的自由への第一歩だと僕は考えています。」(164~165頁)

時計やらバックやら車やら・・・見栄を張ろうと思ったお金がいくらあっても足りません。

こんなもんで見栄を張ったって仕方ありません。

他人がどう思うかばかりを気にして生きていくなんて窮屈でしかたない。

やりたいようにやればいいし、生きたいように生きればいいのですよ。

セクハラ・パワハラ29 男子学生による男性講師に対するセクハラ行為と慰謝料額(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、男子学生による男性講師へのセクハラ行為の存否と職場環境配慮義務等に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人M学園ほか(大学講師)事件(千葉地裁松戸支部平成28年11月29日・労判1174号79頁)

【事案の概要】

Xは、Y社に雇用され、Y社が経営するZ大学で英語の非常勤講師として稼働していたものであるが、本件のうち、Aに対する請求は、Xが、自身のクラスの生徒であるAから、授業中に臀部を触られるなどしたため多大な精神的苦痛を被ったとして、不法行為に基づき慰謝料100万円及び弁護士費用10万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

他方、Y社に対する請求は、Y社はXとAとの言い分が対立している状況の下で、X代理人立会いの下でX本人からの事情聴取をせず、不十分な調査をするにとどめた上、XとAとの関係の改善に向けた方策を何も講じなかったことから、Xが多大な精神的苦痛を被ったとして、労働契約における債務不履行に基づき慰謝料150万円及び弁護士費用15万円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Aは、Xに対し、11万円+遅延損害金を支払え。
Y社は、Xに対し、88万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 XがAの行為によって受けた精神的衝撃は、決して小さなものではないと考えられるが、Aはあくまで「ノリ」で行為に及んだもので、A自身の性欲を刺激興奮させ、又は満足させるという性的意図の下に及んだものとは認め難く(最判昭和45年1月29日参照。したがって、Aの行為は、刑法176条の強制わいせつ罪に該当するものではない。)、この意味において、Aの行為の違法性は、さほど強いものではないというべきである。
加えて、「ノリ」で行為に及んだAからすれば、Xが提訴するほどまでに精神的苦痛を被るとは予想していなかったことがうかがえる上、Aの年齢等を考慮するとAがそのような認識を持ったとしてもそれはやむを得ない側面があることも否定できず(なお、これは、Aの行為が法的に許されるということを意味するものではない。)、そういった事情からすれば、AがXに支払うべき慰謝料の額については、相当因果関係の点からそれほど高い金額を認定することは困難であって、結論としては、10万円が相当である。

2 Y社が、A(2回)及びX(1回)に対する事情聴取並びに出席していた学生4名からの電話による事情聴取により、AがXの臀部に触った可能性は否定できないとの印象を有していたところ、その後Xから再度の事情聴取をせずに、ハラスメント調査委員会が前記のようなEらの印象を覆してAによるハラスメント行為はなかったという結論を下したことについては、不十分な調査によって被用者であるXに不利な結論を下したという外はなく、Y社の措置は労働契約上の義務に違反するものと認められる。
また、Y社の措置は、結局のところXの思いを封じ込める形で事態の解決を図ったものといわざるを得ず、XとAとの関係を「改善させるため」の具体的方策を講じたとは認め難いのであり、加えて、Y社がAに対して次回のXの授業への出席を見合わせるよう指導し、次いでAの英語科目のクラスを変更する措置をとったことが事実であるとしても、これらの措置はXとの関係を改善させるものではなく、単に両者間のトラブル再発を防止するために意味があるにとどまるのであって、この点においても、Y社には労働契約上の義務違反が存するといわざるを得ない。

3 Xは、Y社がX代理人不在のままX本人から事情聴取を行ったことを問題視するところ、弁護士から受任通知を受けた場合には、委任者本人と直接接触することは避けるべきであり、そのことを知らない場合であれば、顧問弁護士等に相談するなどして弁護士が受任した場合にとるべき対応について指導を仰ぐべきであったといえる。
この意味において、Y社の対応は問題があったといわざるを得ないが、弁護士からの受任通知を受けた場合に委任者である本人と接触すべきでないということは、法曹関係者間では格別、世間一般においてはかような認識が広く行き渡っているとはいい難いところがあることに加えて、X本人はあくまで被害者として事情聴取を受けたものであって、弁護士立会いの必要性は加害者に対する事情聴取の場合よりも小さいと考えざるを得ない。
そうすると、この点をもって慰謝料増額事由と評価するのは、相当とはいえない。
その点を措くとしても、Y社はAの履修継続及び事態の早期決着を目指すことを優先して、X側の言い分を尊重しない行動に出たものという外はなく、Y社のかような対応は、非常勤講師である原告を精神的に相当傷つけたものと認められる。
その上で、Y社がXに支払うべき損害賠償の額については、Xが既に再就職を果たしていることを含め、諸々の事情を総合すると、80万円が相当である。

いつもながら、本件のような類型の裁判で裁判所が認める慰謝料の金額はせいぜいこの程度です。

場合によっては費用倒れとなってしまいます・・・。

とにかく慰謝料の金額が低いのですよ・・・。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。