解雇239 著しい能力不足、勤務態度不良を理由とした解雇の有効性(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、著しい能力不足、勤務態度の不良が認められ、解雇が有効とされた裁判例を見てみましょう。

N社事件(東京地裁平成29年2月22日・労経速2308号25頁)

【事案の概要】

Xは、Y社の従業員として勤務してきたが、Y社から、その勤務成績不良、勤務態度不良等理由に解雇された。本件は、Xが、同解雇は労働契約法16条に反し無効であると主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、解雇されなければ得られたであろう賃金の支払及び賞与の支払を請求した事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却(解雇は有効)

【判例のポイント】

1 Xは、Y社に入社して以来極めて低い勤務評定を受け続け、平成10年9月には退職勧奨を受け、自らの欠点を踏まえて明確な成果を出せるよう取り組む旨の決意表明を提出し、平成11年4月には新入社員相当の資格等級である1級職にまで降級された。このように、Xの勤務成績は著しく不良であったと認められ、奮起を促されて決意表明を提出し、その後も上司の指導を受け、いくつもの業務を指示されたものの、そのうちの多くの業務について完遂することができないなど、その勤務成績も不良であったものである。このような中、Y社は、Xを甲に在籍出向させる形でY社社内の印刷業務を行わせようとしたものの、そこでの勤務状況も不良であったことから同出向先から出向解除を要請され、その後産業雇用安定センターへの在籍出向をもXが拒んだことから、やむなくXを解雇したものと認められる
このように、Xの勤務成績の著しい不良は長年にわたるものであり、その程度は深刻であるばかりか、その勤務態度等に鑑みると、もはや改善、向上の見込みがないと評価されてもやむを得ないものである
Y社は、かようなXに対し、人事考課、賞与考課のフィードバック等を通じて注意喚起を続け、かつ、在籍出向を命じるなどして解雇を回避すべく対応しているものであって、手続面でも格別問題のない対応をしていると認められる。このような点に鑑みれば、本件解雇は、客観的に合理的な理由を有し、社会通念上相当と認められるものであって、有効と認められる。

2 Xは、採用以来30年間にわたり、懲戒処分等を受けることもなく勤続してきたにもかかわらず、突然本件解雇を強行した旨主張するが、既に認定した事実及びそれを前提とする説示内容に照らすと、Xが長年問題なく勤務してきたと認めることは到底できないし、Y社としても、Xに対し、その勤務成績が著しく不良であることを感銘付ける努力を行っていると認められるから、その解雇に至る手続面でも問題があるとは認められない。

3 Xは、Y社の対応につきことごとく嫌がらせである旨主張するが、既にみたようにいずれも嫌がらせであるとは認められず、むしろ、Y社は、Xに対し、容易にクリアーできるレベルのオーダーをしてきたということができる。しかるに、そのようなY社のオーダーに対し、結果を出すことができず、一段上へのステップに進むことができなかったXの対応こそが、その著しい能力不足、勤務態度の不良を裏付けているというべきである。

採用以来30年間という極めて長期間にわたるプロセスを経ている事案です。

気が遠くなりますね・・・。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。