賃金138 退職した看護師に対する修学資金等返還請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、辞職した看護師等に対する修学資金等貸付金返還請求に関する裁判例を見てみましょう。

医療法人杏祐会事件(山口地裁萩支部平成29年3月24日・労判ジャーナル64号32頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、かつて雇用していた看護師であるXに対し、①准看護学校在学中の修学資金等として、平成17年4月4日から平成19年3月1日まで合計約146万円を期限の定めなく貸し付け、さらに、②看護学校在学中の修学資金等として、同年4月26日から平成22年3月27日まで合計108万円を期限の定めなく貸し付けたとして、金銭消費貸借契約に基づき、本件貸付①の残元金約146万円及び本件貸付②の元金108万円の合計254万円等の支払を求めるとともに、Xの父であるAに対し、同人が本件貸付の貸金債務を連帯保証したとして、保証契約に基づき、上記同額の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 E事務長等のY社の管理職は、Xが退職届を提出するや、本件貸付の存在を指摘して退職の翻意を促したと認められるのであり、本件貸付は、実際にも、まさにXの退職の翻意を促すために利用されており、しかも、E事務長は本件貸付②だけではなく本件貸付①も看護学校卒業後10年間の勤務をしなければ免除にならないと述べるなど、本件貸付規定は、労働者にとって更に過酷な解釈を使用者が示すことによってより労働者の退職の意思を制約する余地を有するものともいえ、このようなXの退職の際のY社の対応等からしても、本件貸付は、資格取得後にY社での一定期間の勤務を約束させるという経済的足止め策としての実質を有するものといわざるを得ないから、本件貸付②は、実質的には、経済的足止め策として、Xの退職の自由を不当に制限する、労働契約の不履行に対する損害賠償額の予定であるといわざるを得ず、労働基準法16条の法意に反するものとして無効というべきである。

労働基準法16条では「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定されています。

このような病院は複数存在しますが、訴訟になればこのような結果になりますのでご注意ください。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。