Daily Archives: 2018年2月13日

賃金143 就業規則を変更して成果主義型賃金体系を導入する方法とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、就業規則の変更(成果主義型賃金体系導入)の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

東京商工会議所事件(東京地裁平成29年5月8日・労判ジャーナル70号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社が、就業規則を変更し、年齢に応じて昇給する「年齢給」等を内容とする従来のいわゆる年功序列型賃金体系から、「役割給」等を内容とするいわゆる成果主義型賃金体系を導入したことについて、Y社の正職員であるXが、かかる就業規則の変更は従業員にとって不利益変更に当たり、合理性を欠き無効であると主張して、本件変更前の就業規則に基づく賃金を受給する地位の確認を求め、あわせて本件変更により具体的に減額された給与及び賞与部分について未払賃金が発生しているとして、その支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件では、制度変更がなければ事業継続ができないという意味での高度の必要性は認められないが、本件変更により制定された新賃金体系は、成果を上げることでそれに見合った賃金が支給され、従業員を含む職員全員に対し等しく昇級・昇給の可能性が与えられるなど公平性が確保され、制度変更の必要性に見合った相当なものであり、それと一体として改正された人事評価制度にも合理性があり、また、十分とまではいいがたい面はあるものの、激変緩和措置として経過措置が講じられ、不利益を受ける者に対する一定の配慮もされており、かかる観点からも変更された制度内容の相当性は認められ、また、Y社は、本件変更を進める過程で労働組合と交渉し、その意見も取り入れながら具体的な制度設計を行い職員に対しても丁寧に説明するなど、本件変更の合理性を基礎づける事情が認められ、さらに、本件変更が会社職員におおむね受け入れられている様子がうかがわれること等から、本件変更後の就業規則は、労働組合法10条の諸要素に照らし、その合理性を肯定することができ、従業員が本件変更後の就業規則に拘束されないことを前提とした本件各請求には理由がない。

裁判所はプロセスを重要な評価要素としていますので、不利益変更をする場合にはあわてず、やるべきことをしっかりやることがとっても大切なのです。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。