解雇258 解雇が有効と判断されるために準備すべきこととは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、採用ポストに対する職務能力欠如に基づく解雇に関する裁判例を見てみましょう。

アスリーエイチ事件(東京地裁平成29年8月30日・労判ジャーナル71号29頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、Y社による解雇の意思表示は違法無効なものであるとして、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、不法行為に基づき、違法な解雇による損害(逸失利益として6か月分の給与合計330万円及び慰謝料165万円)の賠償を求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xは、会社代表者の次の地位に当たる総合管理職兼営業部長として採用された者であり、その業務内容として、従業員の管理のほか、営業部長として新規取引先の開拓も含まれていたにもかかわらず、在籍した3か月間、新規取引先を1件も開拓しなかったことが認められること等から、就業規則所定の解雇事由は存在し、本件解雇には客観的に合理的な理由があると認められ、また、総合管理職としての業務をみても、会社代表者の許可を得ることなく、部下の就労を違法就労と決めつけ、その労働時間の短縮を指示したほか、会社代表者の許可を得ることなく、本件経費精算手続を大幅に変更した結果、3か月後に従前の経費精算手続に戻す事態になるなど、社内に混乱を生じさせており、さらに、X自らが、部下に対し、作成を指示していた出張報告書を自分の出張に関しては作成していなかった結果、Y社の税理士から、Xの経費精算について、疑問を呈されるなど、総合管理職に求められる資質に問題があると言わざるを得ないから、本件解雇は、社会通念上相当であると認められる。

解雇事由の存在を裏付けるエビデンスを用意すること、会社の業務にいかなる支障が生じたのかについて具体的に主張立証することがとても大切です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。