Daily Archives: 2018年4月5日

解雇261 休職期間満了時における復職の可否に関する判断(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、休職期間満了時の職務に耐えられないことを理由とする解雇の有効性に関する裁判例を見てみましょう。

エミレーツ航空会社事件(東京地裁平成29年3月28日・労判ジャーナル72号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社のA支社総務経理部に所属していた元従業員Xが、同部署の職場環境に起因して心因反応を発症し、これにより休職した後、復職に際してY社に安全配慮義務違反があり、また、Y社での職務に耐えられないことを理由として行われた解雇が無効であるなどと主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、Y社のA支社総務経理部における就労義務がないことの確認、雇用契約に基づく賃金・賞与の支払、安全配慮義務違反(債務不履行)による賃金等相当損害金や慰謝料等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

A支社総務経理部就労義務不存在確認は却下

解雇無効地位確認等請求及び損害賠償請求は棄却

【判例のポイント】

1 Xの心因反応の発症原因がY社の職場環境にあったとは認められず、他方で、X・Y社間の本件雇用契約について、Xの職種を経理職に限定する旨の合意があったことを前提に、Y社は、業務負担の軽減に係る提案、レポーティングラインの変更による心理的負担の軽減に係る提案、他部署への異動等、Xの復職に関して考え得る手立てを相当程度講じたが、それにもかかわらず、Xが総務経理部に復職する見込みが全く立たない状況にあったことを踏まえると、Xのこの状況は、就業規則所定の「社員の精神的または肉体的状態が与えられた職務に耐えられないと判断された場合」に該当するといわざるを得ないから、本件解雇は、客観的合理性及び社会通念上の相当性があり、有効であると認められるから、XがY社に対して雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認を求める請求は、理由がない。

2 Xの就労不能につきY社に帰責事由があるとは認められず、また、Y社のXに対する安全配慮義務違反があるとも認められないから、XのY社に対する賃金及び賞与請求並びに損害賠償請求は、いずれも理由がない。

心因反応が業務に起因すると言えないと戦いとしては厳しくなります。

本件のような休職期間満了による退職処分の場合、休職の原因が私傷病か労災なのか勝敗を決することになります。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。