有期労働契約79 正社員とアルバイト職員の労働条件相違と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、アルバイト職員と正職員の労働条件相違と労契法20条違反の有無に関する裁判例を見てみましょう。

学校法人大阪医科薬科大学(旧大阪医科大学)事件(大阪地裁平成30年1月24日・労判1175号5頁)

【事案の概要】

本件は、Y社において有期雇用職員として就労していたXが、①XY社間の雇用契約において定められた労働条件は、Y社における無期雇用職員の労働条件を下回っており、労働契約法20条に違反するとして、主位的には無期雇用職員と同様の労働条件が適用されることを前提として、また、予備的には労契法20条に違反する労働条件を適用することは不法行為にあたるとして、無期雇用職員との差額賃金等合計1038万1660円の支払、②Y社がXに対して労契法20条に違反する労働条件を適用していたことは不法行為にあたるとして、慰謝料等合計135万5347円の支払+遅延損害金の支払をそれぞれ求めている事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 労契法20条は、「不合理と認められるものであってはならない」と規定しており、同規定は、労働協約や就業規則、個別契約によって律せられる有期雇用労働者の労働条件が、無期雇用労働者の労働条件に比して、法的に否認すべき内容ないし程度で不公正に低いものであることを禁止する趣旨と解される。
また、同条は、有期雇用労働者と無期雇用労働者の労働条件の相違が不合理と認められるか否かの考慮要素として、①職務の内容、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情を掲げているところ、その他の事情として考慮すべき内容について、上記①及び②を例示するほかに特段の制限を設けていないから、労働条件の相違が不合理であるか否かについては、上記①及び②に関連する諸事情を幅広く総合的に考慮して判断すべきものと解するのが相当である。
そして、労契法20条所定の「不合理と認められること」は、規範的要件であって、その文言からして、不合理性を基礎付ける事実は労働者が、不合理性の評価を妨げる事実は使用者がそれぞれ主張立証責任を負うと解するのが相当である。

2 ところで、雇用契約等をもって定められる労働条件は、職種や業務内容、企業規模、労働時間等の様々な要因を総合的に考慮して決定されるものであるところ、期間の定めの有無に関しても、このような要因の一つとして考慮され得るものであって、有期雇用労働者と無期雇用労働者の間で労働条件に相違がある場合は、その相違は、少なくとも期間の定めの有無が要因の一つとなっている可能性は否定できない。また、有期雇用労働者と無期雇用労働者の間に労働条件の相違があり、その相違が労働者の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲、その他の事情を考慮しても不合理な段階に至っている場合には、期間の定めの有無が直接の要因となっているかどうかにかかわらず、法的には是認し難い状態にあるというべきである。以上のような事情に照らすと、有期雇用労働者と無期雇用労働者との間で労働条件に相違がある場合は、期間の定めの有無と明らかに関連がない相違である場合を除き、労契法20条が掲げる各要素に照らし、不合理であるか否かを判断するのが相当であるというべきである。
以上を踏まえて本件についてみると、Y社は、無期雇用職員を正職員、有期雇用職員をアルバイト職員と位置づけてそれぞれ異なる就業規則を設け、賃金その他の労働条件について異なる扱いをしているのであるから、無期雇用職員と有期雇用職員の相違は、期間の定めの有無に関連して生じたものであると認めるのが相当である。

先日、労契法20条に関する2つの重要な最高裁判決が出ましたが、結局、事案ごとに個別具体的に判断していくほかないため、今後も同様の訴訟がたくさん起こされることになります。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。