賃金157 私生活上の非違行為と退職金減額の可否・程度(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、ドライバーではない労働者の業務時間外の酒気帯び運転と退職金の減額に関する裁判例を見てみましょう。

日本通運事件(東京地裁平成29年10月23日・労経速2340号3頁)

【事案の概要】

本件は、Xが、Y社を平成28年4月20日に退職したとして、Y社に対し、退職金248万9015円+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

Y社は、Xに対し、121万4467円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 Y社が、企業としての社会的責任を果たし、名誉、信用ないし社会的評価を維持するため、飲酒運転について厳罰をもって臨み、原則として解雇事由としていることは、必要的かつ合目的的であるといえること、本件酒気帯び運転は、その態様が悪質であり、その行為に至る経緯に酌量の余地はなく、結果も重大であること、Xは、酒気帯び運転により、現行犯逮捕され、実名で新聞報道がされるなどしており、その社会的影響も軽視することはできないことが認められるものの、他方、本件懲戒解雇処分における解雇事由は、私生活上の非行に係るものであること、Xは、本件酒気帯び運転まで、Y社において、26年以上の長期にわたり、懲戒処分等を受けることなく、真面目に勤務してきたこと、本件酒気帯び運転や本件事故について素直に認め、本件店舗に直接謝罪をするとともに、自ら加入していた自動車保険を利用して被害弁償をして示談し、宥恕されていること、Y社に対しても謝罪し、自ら退職願を提出していること、XがY社の従業員であったことまでは報道されておらず、Y社の名誉、信用ないし社会的評価の低下は間接的なものにとどまることが認められる。
これらの事情に加えて、Y社は、Xの持病の治療や父親の看護等を慮って、懲戒委員会の開催を遅らせるとともに、処分決定までの間、Xを無給の休職とすることなく、自宅待機を命じ、基準内賃金等を支払っていたことなどの事情を総合すると、本件酒気帯び運転がXのそれまでの勤続の功労を全て抹消するものとは認め難いものの、大幅に減殺するものといえ、その減殺の程度は5割と認めるのが相当である。

私生活上の非違行為が起こった場合に、退職金をどの程度減額していいのかは難しい問題です。

過去の裁判例等からおおよその妥当性を判断して決定するほかないと思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。