管理監督者38 管理監督者性が認められることはほとんどありません(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、経営に関する権限を相当程度有した労働者の管理監督者性に関する裁判例を見てみましょう。

エルライン事件(大阪地裁平成30年2月2日・労判ジャーナル74号54頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の従業員Xが、Y社に対し、平成25年12月16日から平成28年6月15日までの時間外労働、法定休日労働及び深夜労働に係る割増賃金合計951万1420円等の支払並びに労働基準法114条所定の付加金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

管理監督者には当たらない。

【判例のポイント】

1 Xについては、担当するグループの経営に関する権限を相当程度有し、それなりに高額な賃金を支給されるなど、管理監督者性を肯定する要素も認められるものの、その権限には一定の制約があった上、業務命令により容易に覆されるものであったことも踏まえると、Xが実質的に経営者と一体的な立場にあったとまでいうことはできず、出退勤の自由や待遇の点からみても、労基法上の労働時間等に関する規制による保護が不要であるということはできないから、Xが管理監督者に該当すると認めることはできない。

2 Y社は、Xが管理監督者であると認識して時間外手当等の支給対象外としていたものと認められるところ、Y社の法令解釈は結論として誤っていたといわざるを得ないが、Xの管理監督者性を肯定する要素も一定程度認められ、また、仮にXが管理監督者に該当するとしても、Y社は深夜労働に対する割増賃金の支払義務は免れないところ、本件においては、Xに対し、深夜労働に対する割増賃金の額を超える月額3万円の固定残業手当が支給されていることから、Y社が、Xは管理監督者に該当すると認識し、Xに対する割増賃金を支払わなかったことにも相当の理由があったと認められ、Y社による不払の対応が悪質であったということはできないから、本件において、Y社に対し付加金の支払を命ずるのは相当でない

なかなか管理監督者性のハードルは高いのです。

また、上記判例のポイント2に書かれているように、管理監督者に該当する場合でも、深夜労働に対する割増賃金は支払う必要がありますのでご注意ください。

管理監督者性に関する対応については、会社に対するインパクトが大きいため、必ず顧問弁護士に相談しながら進めることをおすすめいたします。