Daily Archives: 2018年8月9日

同一労働同一賃金7 家族手当、住宅手当、精勤手当の支給の相違と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、家族手当、住宅手当、精勤手当の支給の相違が労働契約法20条違反とされた裁判例を見てみましょう。

井関松山製造所事件(松山地裁平成30年4月24日・労経速2346号18頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で期間の定めのある労働契約を締結して就労している従業員であるXらが、Y社と期間の定めのない労働契約を締結している従業員との間に、賞与、家族手当、住宅手当及び精勤手当の支給に関して不合理な相違が存在すると主張して、Y社に対し、①当該不合理な労働条件の定めは労働契約法20条により無効であり、Xらには無期契約労働者に関する就業規則等の規定が適用される労働契約上の地位に在ることの確認を求め、②平成25年5月から平成27年4月までに支給される本件手当等については、主位的に、同条の効力によりXらに当該就業規則等の規定が適用されることを前提とした労働条件に基づく賃金請求として、予備的に、不法行為に基づく損害賠償請求として、実際に支給された賃金との差額+遅延損害金の支払を求め、③平成27年5月から平成29年10月までに支給される本件手当等について、不法行為に基づく損害賠償請求として、実際に支給された賃金との差額+遅延損害金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

家族手当、住宅手当及び精勤手当については労働契約法20条に違反する。

賞与については同条に違反しない

【判例のポイント】

1 Xらと同一の製造ラインに配属された無期契約労働者との間で、その定常業務の内容に相違はなく、管理業務及び新機種関連業務は重要な業務であるものの、無期契約労働者のうち一部の者について業務が異なるにすぎず、その他の業務に大きな差異も認められないことからすると、Xらと比較対象となる無期契約労働者との業務の内容に大きな相違があるとはいえない

2 有期契約労働者については、定期的な教育訓練は実施されておらず、有期契約労働者を中途採用制度により無期契約労働者とする場合であっても、職制に就任させるためには3年程度の無期契約労働者としての勤務経験を経ることが必要である。そのため、有期契約労働者全体について、将来、組長以上の職制に就任したり、組長を補佐する立場になったりする可能性がある者として育成されるべき立場にあるとはいえない。
したがって、Xらと無期契約労働者の間には、職務の内容及び配置の変更の範囲に関して、人材活用の仕組みに基づく相違があると認められる。

3 中途採用は、ほぼ毎年実施されており、現に平成28年2月時点では、Y社において採用された無期契約労働者であって職制にある11名のうち、9名が有期契約労働者から中途採用されており、無期契約労働者と有期契約労働者の地位が必ずしも固定的でないことは、本件相違の不合理性を判断する際に考慮すべき事情といえる。

4 ・・・Xらにも夏季及び冬季に各5万円の寸志が支給されていること、中途採用制度により有期契約労働者から無期契約労働者になることが可能でその実績もあり、両者の地位は必ずしも固定的でないことを総合して勘案すると、一季30万円以上の差が生じている点を考慮しても、賞与におけるXらと無期契約労働者の相違が不合理なものであるとまでは認めれらない。

5 Y社においても、家族手当は、生活補助的な性質を有しており、労働者の職務内容等とは無関係に、扶養家族の有無、属性及び人数に着目して支給されている。上記の歴史的経緯並びにY社における家族手当の性質及び支給条件からすれば、家族手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難である。・・・有期契約労働者に家族手当を支給しないことは不合理である。

6 Y社の住宅手当は、住宅費用の負担の度合いに応じて対象者を類型化してその者の費用負担を補助する趣旨であると認められ、住宅手当が無期契約労働者の職務内容等に対応して設定された手当と認めることは困難であり、有期契約労働者であっても、住宅費用を負担する場合があることに変わりはない。したがって、・・・不合理であると認められる。

7 精勤手当の趣旨としては、少なくとも、月給者に比べて月給日給者の方が欠勤日数の影響で基本給が変動して収入が不安定であるため、かかる状況を軽減する趣旨が含まれると認められる。・・・有期契約労働者は、時給制であり、欠勤等の時間については、1時間当たりの賃金額に欠勤等の合計時間数を乗じて額を差し引くものとされ、欠勤日数の影響で基本給が変動し収入が不安定となる点は月給日給者と変わりはない。したがって、・・・不合理であると認められる。

先日出された最高裁判決がベースになってきますが、とはいえ、やはりどこまでいっても個別の判断が求められます。

通勤手当や賞与についてはある程度固いところではありますが、それ以外の手当については個々の事情をどう評価するかによって結論が変わり得ると思います。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。