有期労働契約81 女児に対するセクハラに基づく懲戒処分(出勤停止)が重すぎるとされた事案(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、女児に対するセクハラに基づく懲戒処分に関する裁判例を見てみましょう。

セリオ事件(大阪地裁平成30年3月29日・労判ジャーナル76号36頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との雇用契約に基づき、大阪市が設置している大阪市立A小学校いきいき活動室の運営指導員として就労していたXが、Y社から出勤停止の懲戒処分を受け、さらに平成29年3月31日の雇用期間満了時に雇用契約が更新されなかったことについて、当該懲戒処分は無効であるとして出勤停止期間中の未払賃金の支払い、並びに、労働契約法19条によりXとY社間の労働契約は更新されたものとみなされるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認及びそれを前提とした平成29年4月以降の賃金の支払いを請求した事案である。

【裁判所の判断】

懲戒処分は無効
→出勤停止期間中の未払賃金等支払請求を認容

雇止めは有効

【判例のポイント】

1 Xは、いきいき活動室の活動の枠を超えて、積極的に、児童と個人的な接触を持とうとしたものであり、本件事業の公共的性格やそれによって相応の事態を引き起こしていること、Xの行為は、判断能力が不十分な児童を対象とするものであり、保護者や関係者が不安を抱くことは当然であることに照らせば、Xについて、秩序維持の観点から懲戒処分に処すること自体は不当とはいえないが、就業規則によれば、停職は免職に次いで重い処分であるうえ、本件についてみると、その期間は4か月間、効力が生じている期間だけでみても約3か月半に及び、本件雇用契約が1年の有期雇用契約であって、その残月数すべての出勤を停止するものであることも考慮すれば、本件懲戒処分は、処分として極めて重いものといえること等から、懲戒権を濫用するものとして無効というべきである。

2 XとY社間の雇用契約は、平成27年9月1日に締結された後、平成28年4月1日に1度更新されたのみであり、また、更新に際して、新たに雇用条件通知書が作成されていることから、労働契約が過去に反復して更新されたとはいえないし、更新手続が形骸化しているともいえないから、労働契約法19条1号には該当せず、また、同条2号についても、過去の更新回数が一度にすぎないこと、雇用条件通知書では、契約更新は有とされているものの、更新をするかどうかは、「業務量・業務成績・態度・能力・会社の経営状況・従事している業務の進捗状況・その他」により判断するとされているにとどまり、更新が当然の前提あるいは原則となっているとまでは認め難いことに照らせば、更新は、その可能性があるというにとどまり、更新されるものと期待することについて合理的な理由があるとまではいえないから、本件について、労働契約法19条により、労働契約が更新されたとみなすことはできない。

懲戒解雇にせず、期間満了までの約4か月間、出勤停止にすることも重すぎるという判断です。

保護者や関係者の不安を考えると、多くの事業主がそのまま復帰させるという判断はしないのではないでしょうか。

このような事案でも裁判所は上記のような判断をしますので注意しましょう。

日頃から顧問弁護士に相談しながら適切に労務管理を行うことが大切です。