不当労働行為204 使用者が労働者のうち誰が組合員かを知ろうとすることは問題があるか?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、会社が、労組と団交をすることなくパート社員の昇給を発表したこと、組合員のみ現在の給与金額で契約更新の手続きをする旨連絡したこと、労組役員の倉庫立入要求を拒否したことがいずれも不当労働行為に当たらないとされた事案を見てみましょう。

PALTAC事件(広島県労委平成30年2月23日・労判1183号91頁)

【事案の概要】

本件は、会社が、労組と団交をすることなくパート社員の昇給を発表したこと、組合員のみ現在の給与金額で契約更新の手続きをする旨連絡したこと、労組役員の倉庫立入要求を拒否したことが不当労働行為に当たるかが争われた事案である。

【労働委員会の判断】

いずれも不当労働行為に当たらない

【命令のポイント】

1 昇給発表自体は会社の自由になし得ることからすると、会社が29年昇給の発表を行ったことは、不当労働行為には当たらない。

2 使用者がその雇用する労働者のうち誰が組合員であるかを知ろうとすることは、それ自体として禁止されているものではないところ、会社が連絡文書において、会社が把握している組合員に誤りや漏れがあれば連絡するよう求めたのは、現在の給与金額で契約更新の手続きをしなければならない組合員を確認するためであったと認められる。
そうすると、会社が、・・・通知をしたことは、団体交渉の形骸化を狙ったものであるとも、組合活動の萎縮、妨害を意図するものとも認められず、不当労働行為に該当しない。

3 使用者が従業員ではない社外の第三者の会社構内への立入りを認めるかどうかは、原則として、施設管理権の行使として使用者の裁量的判断に委ねられているところ、会社の社員ではない組合本部役員の立入りを拒否したことが直ちに支配介入の不当労働行為に該当するとはいえない。

特に上記命令のポイント2は押さえておきましょう。

組合との団体交渉や組合員に対する処分等については、まずは事前に顧問弁護士から労組法のルールについてレクチャーを受けることが大切です。決して素人判断で進めないようにしましょう。