労働時間53 残業承認制度と使用者の黙示の指揮命令(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、残業承認制度を採用していた会社において承認のない時間の労働時間性が肯定された事案を見てみましょう。

クロスインデックス事件(東京地裁平成30年3月28日・労経速2357号14頁)

【事案の概要】

本件は、Y社との間で雇用契約を締結し、通訳・翻訳のコーディネーターとして勤務していたXが、Y社は労働基準法所定の割増賃金を支払っていないなどと主張して、Y社に対し、割増賃金+付加金+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

Y社はXに対し、80万6988円+遅延損害金を支払え

Y社はXに対し、付加金40万円+遅延損害金を支払え

【判例のポイント】

1 このように、Y社がXに対して所定労働時間内にその業務を終了させることが困難な業務量の業務を行わせ、Xの時間外労働が常態化していたことからすると、本件係争時間のうちXがY社の業務を行っていたと認められる時間については、残業承認制度に従い、Xが事前に残業を申請し、Y社代表者がこれを承認したか否かにかかわらず、少なくともY社の黙示の指示に基づき就業し、その指揮命令下に置かれていたと認めるのが相当であり、割増賃金支払の対象となる労働時間に当たるというべきである。

2 Y社においては、Xを含む従業員がやむを得ずY社承認時刻以降に残業を行うにしても、残業承認制度により割増賃金が支給されないため、可能な限り速やかに終了したいと考えるのが自然である。そして、Xは始業時間から業務メール送信時刻まで継続的に一定量のメールを送信し続けるなどしており、Y社がその可能性を指摘するY社代表者退社後の外出や睡眠といった事実を認めるに足りる証拠もない(なお、Xが本件係争時間中にパソコン画面上の送信メール記録を写真撮影していたことを認めるに足りる証拠はないが、仮に同時間中に写真撮影を行っていたとしても、後記の休憩時間に含まれるといえる。)からすると、本件係争時間については、基本的にその全ての時間においてY社の業務を行っていたものと認めるのが相当である。

特に新しい判断ではありませんが、上記判例のポイント1については使用者は理解をしておかなければなりません。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。