継続雇用制度25 賞与の算定基礎が決まっている場合の未払賞与請求(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、再雇用制度基準に満たないことを理由とする雇止めの有効性に関する裁判例を見てみましょう。

エボニック・ジャパン事件(東京地裁平成30年6月12日・労判ジャーナル81号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元正社員Xが、平成27年3月31日付けで60歳の定年により退職し、雇用期間を1年間とする有期雇用契約により再雇用された後、定年退職後の再雇用制度対象者の基準に関する労使協定所定の再雇用制度の対象となる者の基準を充足しないことを理由として、平成28年4月1日以降は同契約が更新されず、再雇用されなかったことについて、実際には同基準を充足していたことなどから、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で同契約が更新されたとみなされること、平成27年分及び平成28年分の業績賞与の査定等に誤りがあることなどを主張して、Y社に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、本件雇止め以降の未払基本給(バックペイ)並びに前期業績賞与の未払分の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

雇止めは無効

未払賃金・賞与等支払請求は一部認容

【判例のポイント】

1 Y社の正社員として勤務した後に平成27年3月31日に定年退職し、本件再雇用契約を締結したXについては、同契約が65歳まで継続すると期待することについて、就業規則16条2項及び本件労使協定の趣旨に基づく合理的な理由があるものと認められ、Y社のリージョナル人事部ゼネラルマネージャーも、本件労使協定1条について、本件再雇用基準に該当する限りにおいては必ず再雇用するという趣旨の規定であると述べており、そして、本件再雇用契約の終期である平成28年3月31日の時点において、Xは、本件人事考課基準を含む本件再雇用基準に含まれる全ての要素を充足していたから、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認められないものといえ、労働契約法19条2号により、同一の労働条件で本件再雇用契約が更新されたものと認められるから、Xの地位確認請求は理由がある。

2 平成27年分の業績賞与のうち個人業績分の支給がなされていないところ、その算定方法として、年間給与(基本給合計)の28%を業績賞与の算定基礎とし、その70%を個人業績分の算定基礎として、人事考課結果(評価値)を乗じて算定すべきことに争いがなく、そして、平成27年の年間給与は699万9000円であり、Xの人事考課結果は88.15%であるから、Xの業績賞与額(個人業績分)は、120万9246円と算定されるが、他方、平成28年1月1日から同年12月31日までの366日間のうち、本件再雇用契約に基づくXの在籍期間は、同年1月1日から同年3月31日までの91日間にとどまり、同年4月1日から同年12月31日までの期間については、Xは現実に稼働しておらず、人事考課の結果も存在しない以上、同年4月1日以降については、Xが、Y社に対し、具体的な賞与請求権を有するとはいえないから、平成28年分の業績賞与未払額を算定すると、29万2292円となる。

賞与について認められることはまれですが、本件のように算定方法が予め決まっている場合には、解雇や雇止め事案においても請求が認められることになります。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。