セクハラ・パワハラ48 パワハラと指導の境界線とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、人事評価の濫用に基づく差額賞与等支払請求に関する裁判例を見てみましょう。

住商インテリアインターナショナル事件(東京地裁平成30年6月11日・労判ジャーナル81号52頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されている従業員がY社に対し、賞与に関して違法な人事評価をされたと主張して、雇用契約における賞与請求権に基づき、平成26年から平成28年までの各6月及び12月支給の賞与の差額として合計約7万円等の支払を求め、Y社の管理本部長であったA及び代表取締役であるBから、コンプライアンス上の問題に関するメールの送信を禁止されたり、厳重注意処分をされたりするなどのパワーハラスメントを受けたと主張して、安全配慮義務の債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料200万円等の支払を求め、Y社の取締役兼管理本部長兼業務管理部長であるCからもコンプライアンス上の問題に関して被害申告すること自体を禁止されるなどのパワハラを受けたとして、安全配慮義務の債務不履行又は不法行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料100万円等の支払を求め、XがCの指示に反して、コンプライアンス上の問題に関するメールを送信したことを理由としてY社がXに対してした譴責処分は権利濫用に当たり無効であると主張して、同処分の無効確認を求めた事案である。

【裁判所の判断】

差額賞与等支払請求は棄却

パワハラに関する損害賠償請求も棄却

【判例のポイント】

1 Xは、業務管理部長兼取締役管理本部長兼総務・人事リーダーであったDや業務管理副部長であったEの言動に関して、自らの考えに固執し、元社長であったFやAらに対し、特段の根拠も示さずにDやEに対する誹謗中傷、個人攻撃にわたるようなメールの送信等を繰り返していたものであり、AがXに本件メールの撤回ないし取下げを促して口頭注意をし、Bが警告のため本件通知をしたことは、会社の秩序を維持するためにやむを得ないものといえ、Xの人格権を違法に侵害するものと認めることはできず、AがXに対して本件メールの撤回ないし取下げを促し口頭注意をしたことや、Bが本件通知をしたことが従業員の人格権を違法に侵害するものと認めることはできないから、A及びBによるXへのパワハラを認めるに足りず、これに基づくXのY社に対する損害賠償請求は、理由がない

2 Xは、上司であるCからコンプライアンス違反に当たらないようなことについてメールを送信することを禁止する旨の職務命令を受けていたにもかかわらず、これに従うことなく、その後もCやBに対し、同命令の撤回や謝罪を求めるメールの送信を繰り返していたというのであって、本件譴責処分は会社の秩序維持のためやむを得ず行われたものと解され、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとはいえず、権利の濫用に当たらない

一連の経緯についてどれだけ裏付けがとれるかが勝敗を決します。

訴訟まで発展しそうな場合には、労使ともにエビデンスの確保がキモとなります。

ハラスメントについては、注意喚起のために定期的に研修会を行うことが有効です。顧問弁護士に社内研修会を実施してもらいましょう。