労働災害95 自賠責保険の支払いにおける被害者優先説(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、自賠責保険の支払いにおいて労災保険法12条の4に基づく国の請求よりも被害者の直接請求を優先すべきとした判例を見てみましょう。

保険金請求事件(最高裁平成30年9月27日・労経速2364号3頁)

【事案の概要】

本件は、自動車同士の衝突事故により被害を受けたXが、加害車両を被保険自動車とする自動車損害賠償責任保険の保険会社であるY社に対し、自動車損害賠償保障法16条1項に基づき、保険金額の限度における損害賠償額及びこれに対する訴状送達の日の翌日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める事案である。

原審は、Xの請求につき、自賠責保険金額の合計である344万円及びこれに対する原判決確定の日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で認容した。

【裁判所の判断】

原判決中、344万円に対する平成27年2月20日から本判決確定の日の前日までの遅延損害金の支払請求を棄却した部分を破棄し、同部分につき本件を東京高等裁判所に差し戻す。

【判例のポイント】

1 ・・・しかしながら、被害者が労災保険給付を受けてもなお塡補されない損害(以下「未塡補損害」という。)について直接請求権を行使する場合は、他方で労災保険法12条の4第1項により国に移転した直接請求権が行使され、被害者の直接請求権の額と国に移転した直接請求権の額の合計額が自賠責保険金額を超えるときであっても、被害者は、国に優先して自賠責保険の保険会社から自賠責保険金額の限度で自賠法16条1項に基づき損害賠償額の支払を受けることができるものと解するのが相当である。

2 自賠法16条の9第1項にいう「当該請求に係る自動車の運行による事故及び当該損害賠償額の確認をするために必要な期間」とは、保険会社において、被害者の損害賠償額の支払請求に係る事故及び当該損害賠償額の確認に要する調査をするために必要とされる合理的な期間をいうと解すべきであり、その期間については、事故又は損害賠償額に関して保険会社が取得した資料の内容及びその取得時期、損害賠償額についての争いの有無及びその内容、被害者と保険会社との間の交渉経過等の個々の事案における具体的事情を考慮して判断するのが相当である。このことは、被害者が直接請求権を訴訟上行使した場合であっても異なるものではない。

案分説と被害者優先説のうち、後者が採用されています。

なお、類似の事案において、既に最高裁判決(最判平成30年2月19日)が存在し、本件と同様の理由から被害者優先説が採用されています。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。