労働災害96 上司勧誘のマラソン大会における死亡と労災該当性(業務起因性)(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、上司勧誘のマラソン大会における心停止と死亡の業務災害該当性に関する裁判例を見てみましょう。

国・菊池労基署長事件(熊本地裁平成30年8月29日・労判ジャーナル82号48頁)

【事案の概要】

本件は、銀行員であった亡労働者Xの父が、Xが上司から誘われて参加したマラソン大会において心停止となって死亡したとして、老舎災害補償保険法に基づく遺族補償年金及び葬祭料の各支給を請求したが、菊池労働基準監督署長がいずれも支給しない旨の各処分をしたことから、本件各処分は違法であるとして、国に対し、本件各処分の取消しを求めた事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 本件大会への参加は、支店の支店長が支店内で行員らを勧誘したことを契機とするものではあるが、その声かけの態様は、Xら特定の行員に対し、業務の一環として本件大会への参加を求めるものではなく、支店の行員以外の行員らも含めて広く声かけをしたにすぎない私的なものであって、これに対する行員らの対応をみても、参加しない意思を表明した者や申込書を受け取らない者もいるなど、本件大会に参加するか否かは行員らの各自の判断に委ねられていたということができ、さらに、本件大会とその1か月余り後に開催された第2回熊本リレーマラソン自体、熊本銀行が特別協賛したにとどまり、行員らが参加した場合の参加費が免除されるなど、行員らにとって一定の利益を受ける面はあったものの、行員の参加が熊本銀行において要請されていたものではない上、そもそも本件大会とは主催者も異なる無関係の大会であるといわざるを得ないから、熊本銀行の行員にとって、第2回熊本リレーマラソンへの参加が業務に当たるとはいえず、本件大会への参加がその準備行為として業務に当たるということもできず、本件大会の参加がXの業務行為又はそれに伴う行為として行われたということができないから、本件災害が業務災害に当たると認めることはできない。

事実上強制されていたと認定されるかどうかがポイントになりますが、裁判所はこの点について否定しました。

他の行員の対応から判断するとこのような結論になるのもしかたがないように思います。

労災発生時には、顧問弁護士に速やかに相談することが大切です。