継続雇用制度26 定年後再雇用者の労働条件と同一労働同一賃金問題(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。 今週も一週間がんばりましょう。

今日は、定年後再雇用者につき、定年前後の基本給等の差異は不合理でないとされた裁判例を見てみましょう。

日本ビューホテル事件(東京地裁平成30年11月21日・労経速2365号3頁)

【事案の概要】

本件は、Y社を定年退職後にY社との間で期間の定めのある労働契約を締結していたXが、当該有期労働契約と定年退職前の期間の定めのない労働契約における賃金額の相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であり労働契約法20条に違反するとして、Y社に対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額688万0344円+遅延損害金の支払を求める事案である。

【裁判所の判断】

請求棄却

【判例のポイント】

1 Xの定年退職時と嘱託社員及び臨時社員時の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)は大きく異なる上、職務の内容及び配置の変更の範囲にも差異があるから、嘱託社員及び臨時社員の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし、Xの嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできない
そして、その他の事情についてみるに、定年退職時の年俸額はその職務内容に照らすと激変緩和措置として高額に設定されている上、正社員の賃金制度は長期雇用を前提として年功的性格を含みながら様々な役職に就くことに対応するように設計されたものである一方で、嘱託社員及び臨時社員のそれは長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず、原則として役職に就くことも予定されておらず、その賃金制度の前提が全く異なるのであり、このような観点からみても、正社員時の賃金額と嘱託社員及び臨時社員時の賃金額に差異があること自体をもって不合理といえないことは明らかである。
加えて、Xの定年退職時の年俸の月額とこれに対応する嘱託社員及び臨時社員時の賃金とを比較するとその違いは小さいものとはいえないが、それらの賃金額は職務内容が近似する一般職の正社員のそれとは比較においては不合理に低いとまではいえないことも併せ考慮すれば、Y社における嘱託社員及び臨時社員の賃金額の決定過程に労使協議が行われていないとのXの指摘を踏まえてもなお、Xの定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできず、これをもって労働契約法20条に違反するということはできない。

まだ当分の間、労働契約法20条に関する裁判が続くと思われます。

最高裁判決が出てもなお、個別の事情を踏まえての判断になるため、紛争自体はなくなりません。

高年法関連の紛争は、今後ますます増えてくることが予想されます。日頃から顧問弁護士に相談の上、慎重に対応することをお勧めいたします。