労働時間54 事業場外みなし労働時間制が有効と判断される場合とは?(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、事業場外みなし制の適用が認められた事業場外協定も有効とされた裁判例を見てみましょう。

ナック事件(東京高裁平成30年6月21日・労経速2369号28頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に雇用されていたXをY社が懲戒解雇したことに関連して、X及びY社がそれぞれ以下の請求をする事案である。

1 XとY社との労働契約に基づく賃金支払請求、XとY社との労働契約に基づく立替金請求、不当利得返還請求、労働基準法114条、37条に基づく付加金請求

2 Y社の反訴請求

原審は、①本訴請求のうち、賃金支払請求について、平成24年1月分から平成25年11月分に係る残業代191万1867円+遅延損害金の支払を命ずる限度で認容したが、その余は、平成26年1月23日を解雇の日と認定した上で、弁済、民法536条1項の危険負担又は契約の終了により債務が消滅したとして、いずれも棄却した。
営業経費の立替金請求については、17万1030円+遅延損害金の支払を命ずる限度で認容し、不当利得返還請求については、Y社に利得がない又は非債弁済に当たるとして、これを棄却した。
付加金請求については、除斥期間が経過していない平成24年8月分ないし平成25年11月分までの割増賃金について75万円+遅延損害金の支払を命ずる限度で認容した。

【裁判所の判断】

Y社の控訴に基づき、原判決中Y社の敗訴部分を取り消す。

Xは、Y社に対し、60万円+遅延損害金を支払え。

【判例のポイント】

1 Xが従事していた業務は、事業場(支店)から外出して顧客の元を訪問して、商品の購入を勧誘するいわゆる営業活動であり、その態様は、訪問スケジュールを策定して、事前に顧客に連絡を取って訪問して商品の説明と勧誘をし、成約、不成約のいかんにかかわらず、その結果を報告するというものである。訪問のスケジュールは、チームを構成するXを含む営業担当社員が内勤社員とともに決め、スケジュール管理ソフトに入力して職員間で共有化されていたが、個々の訪問スケジュールを上司が指示することはなく、上司がスケジュールをいちいち確認することもなく、訪問の回数や時間もXら営業担当社員の裁量的な判断に委ねられていた。個々の訪問が終わると、内勤社員の携帯電話の電子メールや電話で報告したりしていたが、その結果がその都度上司に報告されるというものでもなかった。帰社後は出張報告書を作成することになっていたが、出張報告書の内容は極めて簡易なもので、訪問状況を具体的に報告するものではなかった。上司がXを含む営業担当社員に業務の予定やスケジュールの変更について個別的な指示をすることもあったが、その頻度はそれ程多いわけではなく、上司がXの報告の内容を確認することもなかった
そうすると、Xが従事する業務は、事業場外の顧客の元を訪問し、商品の説明や販売契約の勧誘をするというものであって、顧客の選定、訪問の場所及び日時のスケジュールの設定及び管理が営業担当社員の裁量的な判断に委ねられており、上司が決定したり、事前にこれを把握して、個別に指示したりすることはなく、訪問後の出張報告も極めて簡易な内容であって、その都度具体的な内容の報告を求めるというものではなかったというのであるから、Xが従事していた業務に関して、使用者が労働者の勤務の状況を具体的に把握することは困難であったと認めるのが相当である。

いかがでしょうか。

事業場外みなし労働時間制が肯定される数少ない例です。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。