Daily Archives: 2019年4月4日

解雇294 即戦力としての中途入社従業員に対する試用期間中の解雇(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、試用期間中になされた解雇に関する裁判例を見てみましょう。

Ascent Business Consulting事件(東京地裁平成30年9月26日・労判ジャーナル84号44頁)

【事案の概要】

本件は、Y社に中途採用されたXが、その試用期間中に本採用拒否(解雇)されたところ、同解雇が客観的合理的理由を欠き、社会通念上も相当でないとして無効であると主張し、労働契約上の地位確認を求めるとともに、同解雇後の賃金請求権に基づき、54万3750円等並びに平成28年4月から毎月25日限り100万円等の支払をそれぞれ求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇有効

【判例のポイント】

1 Xは、会社が自ら6か月間という試用期間を設定し、それが本件雇用契約の内容となっている以上、その期間経過を経ずに雇用を打ち切るとの判断を正当化するだけの高度の合理性、相当性が求められるとして、そのような高度の合理性、相当性が認められない本件解雇は無効である旨主張するが、Xはその年齢、経験等に照らして一定程度の分別を求められてしかるべき立場にあり、かつ、一定程度の能力を有することを前提とし、高額の報酬をもって即戦力として会社に迎え入れられたものであることに照らすと、その改善可能性を過度に重視することは相当でないというべきであるから、このような労働者について、雇用契約の内容に見合うだけの資質、能力を有しないことが合理的な根拠をもって裏付けられた場合にまで、試用期間の満了を待たなければ本採用拒否ができないと解することは相当ではなく、加えて、Xの言動により会社内に著しい迷惑をかけ、混乱を生じさせているのは明らかである以上、試用期間の中途であっても解雇の意思表示をすることが許されないとする合理的な理由はないというべきである。

本件のように、即戦力として中途入社した場合にはこのような判断をよく見かけます。

なお、一般的に、試用期間中だからといって、解雇が容易にできるわけではありませんので誤解しないようにしましょう。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。