解雇295 能力不足を理由とする解雇を有効に行うためのプロセス(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。今週も一週間お疲れ様でした。

今日は、能力欠如等を理由とする解雇に関する裁判例を見てみましょう。

シンボリックシティ事件(東京地裁平成30年9月13日・労判ジャーナル84号50頁)

【事案の概要】

本件は、シェアハウス等の経営・運営・管理、不動産の所有・売買・仲介・賃貸・管理・あっせん並びにコンサルティング業務等を目的とするY社に雇用されたXが、Y社によって行われた解雇が無効かつ違法であると主張して、Y社に対し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認とともに、同契約に基づく上記解雇後の賃金の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

解雇無効

【判例のポイント】

1 Y社は、Xが退職することに応じた旨を主張するところ、本件雇用契約においては、Y社がXに対して解雇通知書を発出して明確に「解雇」の意思表示をしていること、また、その後に解雇理由証明書も発出されて、同書面に解雇理由が列記されていること、さらに、Y社が債権者に宛てて発出した自身の経営状況を知らせる通知においても従業員を解雇するに至った旨が明記されていること、これに加えて、Xが退職勧奨に合意をしていない旨を明らかにしていることからすると、Y社がXを解雇したことが明らかに認められ、これに照らすと、解雇理由証明書においてXの退職合意に関する記載をY社が一方的にしているからといって、これによって、そのような退職合意の事実があったことを推認することはできないから、Xが退職することを合意したとのY社の主張は理由がない。

2 Xは、Y社に入社した当初頃の平成28年11月分の基本給が25万円であったところ、その後に稼働を続けて、本件解雇当時である平成29年12月までには、基本給28万円及び資格手当3万円の月額合計31万円に昇給したばかりでなく、時には報奨金やインセンティブの支払を受けていたことが認められ、これらの事実からすると、Xは、Y社において特段の落ち度なく勤務してきたものと推認されるが、これに対し、Y社は、Xの職務遂行能力が欠如している等の解雇理由を様々に主張するが、そのような事実を客観的に的確に認めるに足りる証拠は一切ないから、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないから、解雇権を濫用したものとして無効である。

能力不足を理由として解雇する場合には、しっかり証拠を揃えなければ認定してもらえません。

事前準備なく解雇をしてしまうと訴訟になってからが大変です。

解雇を選択する前には必ず顧問弁護士に相談の上、慎重かつ適切に対応することが肝心です。決して、素人判断で進めないようにしましょう。