労働時間55 専門業務型裁量労働制の適用の可否(労務管理・顧問弁護士@静岡)

おはようございます。

今日は、専門業務型裁量労働制の適用の可否に関する裁判例を見てみましょう。

インサイド・アウト事件(東京地裁平成30年10月16日・労判ジャーナル85号50頁)

【事案の概要】

本件は、Y社の元従業員Xが、時間外労働等に対する割増賃金の支払がないこと及びY社による違法なハラスメントにより多大な精神的苦痛を受けたことなどを主張して、Y社に対し、平成26年9月1日から平成27年10月23日までの期間の稼働に係る割増賃金等、労働基準法114条所定の付加金等、並びに不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案である。

【裁判所の判断】

専門業務型裁量労働制を適用を否定

【判例のポイント】

1 Y社は、Xの担当業務が「広告等の新たなデザインの考案の業務」に該当することを前提として、本件労使協定及び本件無期契約に基づき、専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3)を適用していたから、Xの1日の労働時間は9時間とみなされるなどと主張するが、本件業務について、「その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量にゆだねる必要がある」ような性質の業務であるとはいえないし、「当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難」であるともいえず、本件業務が労働基準法施行規則24条の2の2第2項4号所定の「広告等の新たなデザインの考案の業務」に該当するとは認め難く、本件業務以外のXの業務についても、専門業務型裁量労働制の対象業務が含まれていることを窺わせる証拠は存しないから、本件無期契約について、専門業務型裁量労働制を適用する余地はなく、Y社の主張を採用することはできない。

2 Y社は、職務手当について、時間外労働等に対する割増賃金として支給されていたことを主張するところ、Y社の賃金体系における職務手当が、極めて長時間労働を恒常的に行わせることを想定した割増賃金の合意がされていたと認めることは困難であり、そして、Xの職務手当の金額について、Xに想定される勤務実態に沿って設定されたという形跡は窺われず、職種の違いに応じて設定されたとみるほかないこと等から、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金の部分との区分が明確になされているとはいえないから、職務手当の支給をもって割増賃金の支払とみることはできない。

裁量労働制は、労基法上の労働時間規制の例外規定ですので、その解釈は厳格に行われます。

形式的に法律や施行規則の文言のみを見て、都合よく解釈してしまうと違法と判断されるリスクがありますのでご注意ください。

労働時間に関する考え方は、裁判例をよく知っておかないとあとでえらいことになります。事前に必ず顧問弁護士に相談することをおすすめいたします。